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思慮(9月3日)

 福島市の「こむこむ」前に置かれた子どもの像が波紋を広げた。防護服姿で、胸に付く線量計を模した数値はゼロを示す。現代アート作品「サン・チャイルド」である。「さらなる風評を招く」「復興のシンボルになる」。賛否の声が相次いだ。
 設置場所への疑問もあった。市は子どもたちの明るい未来を感じるとして選んだ。こむこむは正式名称を「子どもの夢を育む施設」と言う。額は傷つき、頬にはばんそうこう。痛々しくもある。「意見が割れる作品を復興の象徴として展示し続けるのは困難」と、一カ月足らずで撤去を決める。
 作者は被災地を勇気づける熱意を込めた。復興は道半ば。芸術の問い掛けは、時に言葉より重い。六年前に福島空港で展示した際、反対はほぼなかった。「これ以上の対立を生みたくない。場所や時期、方法に細心の注意を払うべきだった」。コメントに苦悩がにじむ。
 市は批判の高まりを受け、市民に感想や意見を求めた。対応は後手ではなかったか。経緯を丁寧に説明する姿勢が必要だった。福島を見つめるさまざまな視線といかに向き合い、深く思慮し、理解を広げていくのか。今回の経験には多くの教訓が含まれている。

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