あぶくま抄・論説

あぶくま抄

  • Check

失敗の現場(9月4日)

 大熊町の中心部は人々の息遣いが、いまだに聞こえない。その中に県の旧原子力災害対策センター(オフサイトセンター)がひっそりと立つ。二〇二〇年までに取り壊されるという。
 東京電力福島第一原発から五キロしか離れていない。事故直後、政府の現地対策本部が置かれた。前線基地のはずが、東京との電話はなかなかつながらない。食料と水の蓄えはわずか。換気装置は外からの放射性物質を取り除く働きを備えておらず、室内の放射線量がぐんぐん上がった。震災から五日目に撤退した。
 事故から約七年半が過ぎた今もほぼ当時のままだ。ホワイトボードに走り書きのメモ、机の上には飲みかけのペットボトルが置いてある。重大事故など起きるはずがない。多くの人が考えていた。防災において思い込みがいかに危険か…。そう実感させられる「失敗の現場」に変わった。
 解体した後は、復興に向けて宅地などの活用が予定されている。県は震災・原発事故の記録を残すアーカイブ拠点施設を双葉町につくる。センターに残された品も運ぶ。貴重な教訓として、いかに活用し後世に伝えるか。単なる展示に終わらぬよう、知恵を絞らねばならない。

カテゴリー:あぶくま抄

あぶくま抄

>>一覧