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【復興庁の後継組織】議論の加速を求める(9月4日)

 復興庁は二年七カ月後に廃止される。吉野正芳復興相(衆院本県5区)は「心の復興事業は必要だ」と強調する。国として引き続き、心のケアを含む被災者支援に当たるため、後継組織の検討を急ぐ考えを事あるごとに表明してきた。被災地の要望をきめ細かく的確に把握した上で、議論を加速させるべきだ。
 にわかに「復興防災省」なる言葉が注目されている。七日告示、二十日投開票の自民党総裁選に立候補する石破茂元幹事長は、本紙を含む地方紙記者との意見交換会で、復興庁を母体とした復興防災省を新設すべきだと主張した。自民党の二階俊博幹事長は安倍晋三首相に、復興庁の後継組織として「復興、防災、国土強靱[きょうじん]化を統括する新たな省」の設立を提言した。首相は「いろいろ検討したい」と応じたとされる。石破氏と二階氏の念頭にあるのは同じような組織と思われる。肝心なのは首相の胸の内だろう。
 西日本豪雨や大阪北部地震が起き、政府・与党からは、司令塔機能を持つ防災省や防災庁の創設を求める声が相次ぐ。自民党東日本大震災復興加速化本部が七月にまとめた第七次提言案でも、復興と防災の観点で新体制を構築するよう政府に求めている。政府は議論を本格化させ、今年度中に一定の方向性を打ち出すとしている。事実上の次の首相を決めることになる総裁選では、ポスト復興庁の在り方、復興・創生期間後の財源確保などの具体策について、被災地の意見をくみ上げるような論戦を望む。
 石破氏は公約「日本創生戦略 石破ビジョン」を提唱している。首相は「責任、実行」をキャッチフレーズにした公約を打ち出した。踊る言葉に惑わされず、被災地の視点で政策を細かく確かめなければならない。
 震災から間もなく七年半を迎える。時間の経過とともに、被災地の実情は多様化、複雑化している。被災地も自立に向けて努力している。しかし海外における県産品の輸入規制の早期撤廃を働き掛けることは国の政治力に頼らざるを得ない。風評払拭[ふっしょく]にはまだまだ国の関与が必要だ。
 首相は総裁選に臨む「五つの決意」として、経済成長、社会保障改革などとともに「憲法改正」を掲げた。石破氏は改憲に対し「国民の深い理解が必要」と慎重姿勢を示す。国の根幹に関わる政策論争も大事だが、人口減少、少子高齢化などで疲弊する地方への目配りを忘れないでほしい。それがひいては被災地の復興の歩みを確固たるものにすると信じる。(浦山文夫)

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