あぶくま抄・論説

日曜論壇

  • Check

世界の廃止措置動向と福島(9月9日)

 今年の六月、東京電力は福島第二原子力発電所の廃止措置検討の方針を発表した。世界では経済性を理由に停止する原子炉も増えており、百六十基余りの原子力発電所が廃止されようとしている。米国では二〇一四年の時点で三十三基の廃止が決まり、負の遺産を次世代に先送りせず、経験者を活用して廃止措置計画を進めた方が良いと考え、早期解体のケースが増えている。特に、軽水炉は二〇〇〇年頃に効果的な化学除染法(コード法等)が開発されて原子炉内の放射線量を下げられるようになり、炉内作業が容易になり、また廃炉も工期短縮が図られた。コード法は、福島第一で、原子炉を囲むシュラウドと呼ばれる大きな円筒にひびが入り、その交換工事に使われた。化学除染に加えて遮蔽[しゃへい]体を置くことで、炉内に人が入って工事ができ、工事の後半ではマスクも必要とせず、女性技術者も原子炉内に入った。
 軽水炉の廃止措置でしばしば引用されるのがスペインのマドリード近郊の小型加圧水型炉のホセ・カブレラ炉の工事だ。二〇〇六年に発電所は閉鎖され、廃止措置工事は二〇一〇年に開始し、二〇一六年までに解体完了、二〇一八年には更地にして敷地を返還する計画で進められていた。二〇一六年にマドリードで国際原子力機関主催の廃炉や廃棄物に関する会議が開催され、福島の状況を発表したが、そこで入手した資料では、土地除染作業は残っているが、発電所は既に更地になっている写真が載っていた。
 工事には三十五社ほどが参加した。原子炉の解体は海外原子炉メーカーが行ったが、地元企業の参加を重視して、他の工事の多くは地元中心で行われ、66%が地元県内の人であった。地元参加は住民の理解にとって大切と考え、地元雇用は最重要施策の一つだった。その結果、ホセ・カブレラ炉の廃止はほぼ計画通りに進み、国際的にも高い評価を受けて報道された。地元の参加が、いかに大切かがわかる。
 福島第一の損傷した廃炉工事は、通常炉と異なり、リスクも高く地元企業はなかなか参入するのが難しい。汚染水を入れたフランジタンクからの漏れが問題になり、信頼性の高い溶接タンクに切り替えるという議論が始まった時、工場でコンクリートの部品を事前に製作(プレキャスト)しておき、現地で組み立てる、プレキャスト・コンクリートタンクの提案があった。このタイプのタンクは上水道系で使われ、地震時でも破損例は報告されていなかったのと、県の専門家は県内で製作できるとの意見であったので協力した。学会の専門会議の議題にまでは上ったが、最終的には採択されなかった。
 福島第一の破損した原子炉の工事はリスクが高く、地元企業の参入には困難があるが、今後通常停止した原子炉の廃止も行われるので、ホセ・カブレラ炉の例にあるように地元参加の機会が大きくなる。今後は地元参入を積極的に検討すべきと考える。(角山茂章、会津大学前学長)

カテゴリー:日曜論壇

日曜論壇

>>一覧