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【福島市の大学連携】人材定着で好循環を(9月12日)

 急速な少子化と本県の特殊事情である原発事故は、大学の存在理由の一つである地域の将来を担う人材供給に色濃い影響を与えている。福島市の「産官学」の協力関係を緊密にして課題を克服しようと、市、大学、経済団体が先月、人材育成や地域活性化に関する連携協定を締結した。連携による学生定着が産業などの活性化への好循環を生むことを期待したい。
 本県には教育、研究、地域貢献などで十九の大学などが連携する「アカデミア・コンソーシアムふくしま」が二〇一〇(平成二十二)年に発足した。二〇一六年には文部科学省の地方創生推進事業(COC+)に基づいて、地域への人材供給に重点を置いた県や大学、経済団体による協定が結ばれるなど、大学が持つ資源を地域が積極的に活用する仕組みが整いつつある。
 今回、連携協定を結んだのは福島市と桜の聖母短大、福島学院大、同短期大学部、福島大、福島医大、福島商工会議所、県中小企業家同友会福島地区。底流にある十八歳人口減少に加え、原発事故による風評影響も伴う首都圏など市外への流出は大学にとって喫緊の課題だ。参加組織には、流出が続けば生産年齢人口の減少につながり、産業界での人員不足による機能不全、産業衰退までつながるという危機感がある。現状を見れば地域の組織力結集は必然であり、もはや早急に成果が求められる段階とも言える。
 まず若者の流出に歯止めをかけられれば、負の循環は逆に回すこともできる。個々の大学が地域や若者のニーズに呼応して研究機能や魅力を向上させることを大前提に、連携による補完で新たな価値を生み出したい。福島大に来春誕生する食農学類は、原発事故の影響から立ち直ろうとする関係業界を直接的に支援する拠点と期待できる。産業界が求める人材を明確化し、中小企業も大卒者採用のメリットを認識すれば地元雇用も拡大する。人材の定着は幅広い好影響を地域にもたらすはずだ。高齢化社会にあって、学び直しの場として大学の存在意義はますます大きくなる。
 組織は保育士不足につながる早期離職を抑制する支援にも当たる。安心して子育てができる環境は、よそから移住を促す好材料にもなろう。
 地域の優良企業の存在を学生にも保護者にも知ってもらう必要がある。昨今の情報通信技術は地方にあって世界市場を相手にするビジネスも可能にする。優秀な人材を域外に送り出してしまうデメリットを、地域全体で再認識すべき時代だ。(佐久間順)

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