あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【郡山の柳橋歌舞伎】時代の波を乗り越えて(9月13日)

 江戸時代から続く郡山市重要無形民俗文化財「柳橋歌舞伎」が十六日に地元の伝承館(黒石荘)で上演される。住民が役者から三味線、音響、照明、衣装などの裏方まで務めてきた。災害や戦争による中断はあっても住民の熱意で伝えてきた。二十年前から柳橋地区全戸が保存会に入り、中学生も演目の一部を担っている。少子高齢化などの影響が懸念されるが、柔軟な発想と積極的な姿勢で古里の魅力を発信してもらいたい。
 柳橋歌舞伎は約二百年前、現在の郡山市中田町柳橋に住みついた旅芸人が伝えたとされている。神社の祭礼で奉納したり、太平洋戦争後は青年歌舞伎として他町村でも披露した。一九八〇(昭和五十五)年に有志により柳橋歌舞伎保存会が結成され、定期公演や継承に取り組んでいる。
 定期公演は当初、秋の収穫後だった。知名度が上がり観客が増えたため、寒さを考え九月の第三日曜日に固定した。働き手の流出で役者不足に悩むと、地元・御舘中の創立記念行事や総合学習の時間で歌舞伎を指導したのを機に舞台を任せた。今年も中学生が「白浪五人男」「義経千本桜」を披露し、大人が演じる「一谷[いちのたに]嫩[ふたば]軍記」につなぐ。
 御舘中の舞台は全生徒が参加する。男子は役者や照明、女子は三味線や化粧係などを務める。最近は少子化が継続に影を落とし始めた。十三年前まで約百人いた生徒は四十三人に減った。来年は男女の構成から男子だけで役者を担えなくなるという。保存会役員は「一生懸命な生徒たちを見て、女子が役者でも問題はない」と理解を示す。
 舞台づくりに関わる保存会研究部に今年、二十代と三十代の若手が加わった。いずれも中学時代に歌舞伎の魅力を知ったという。少子高齢化の現実を受け止め、小学生への歌舞伎の指導や、地域の枠を越えて賛同者を募る構想もある。郷土愛の醸成と伝統文化の継承に向け、惜しまぬ努力を期待する。
 柳橋歌舞伎は東日本大震災後、心の復興を応援しようと県内の被災地へ出掛け、公演した。来年二月、東京で開かれる全国農協観光協会主催の「民俗芸能と農村生活を考える会」に出演する。過去二回に出演した震災被害の大きい岩手、宮城両県の代表に次いで依頼を受けた。
 会場で地元農産物や加工品の販売、周辺の紹介も予定されている。本県の現状と復興ぶりを広め、観光誘客にもつなげる機会だ。柳橋歌舞伎を愛する人々をさらに増やし、その支えを励みに役割を果たしてほしい。(浅倉哲也)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧