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帰還者の健康守る ふくしまに生きる-次世代へ-(20)

 「患者が適切に薬を飲んでいるか確認してください」。富岡町の県立ふたば医療センター付属病院の看護師門馬君江(63)は患者宅を訪問する前、他の看護師と綿密に打ち合わせをする。
 四月に開院した付属病院は双葉郡の医療の中核を担う。訪問看護を中心とする在宅診療を七月に始めた。救急医療とともに力を入れている。伊達市の訪問看護ステーションに約二十年間勤めた門馬は、訪問看護の体制づくりの中心的な役割を果たす。若手看護師と二人一組で患者宅を訪れ、服薬などを指導する。「患者に安心感を持ってもらうため、看護師同士の情報共有が大切」と語る。

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示が解除され、双葉郡内は住民帰還が進む。高齢者が多い。八月一日現在、震災前の住民の約半数が戻った楢葉町は人口に占める六十五歳以上の割合を示す高齢化率は38・9%で県平均の30・8%を上回る。門馬によると、住民の避難生活で地域コミュニティーが希薄になる中、高齢者の病状を把握し悪化を防ぐ訪問看護の重要性が高まっている。救急搬送された患者の中には、訪問看護でケアしていれば悪化することはなかったと感じるケースも多いという。
 避難指示区域が設定された十二市町村には原発事故発生前、百カ所の医療機関があった。八月一日現在、診療しているのは新設を含め三十一カ所にとどまる。双葉郡内はタクシーやバスなどの交通機関の利便性が悪く、高齢者の通院を妨げる一因となっている。郡内で訪問看護を実施しているのは、付属病院と医療法人社団養高会(広野町)の訪問看護ステーションのみで、在宅診療サービスの環境は整っていない。門馬は「住民の生活全般に目を配るため、訪問看護体制を充実させる必要がある」と訴える。

 看護師が不足していることもあり、付属病院で訪問看護を担当する六人全員が夜勤のある救急外来との掛け持ちだ。県の要請に基づき、首都圏などの病院から看護師十一人の応援派遣を受けているが、長期的な支援は望めない。付属病院副院長兼看護部長の児島由利江(62)は当面、現状の看護師数で対応できる体制づくりを急ぐ。今後の訪問看護のニーズの高まりに備え、二〇一九年度から看護学生の実習を受け入れ、救急医療と在宅診療を一カ所で経験し技術を磨くことができる特色をアピールして看護師確保につなげる。
 「古里で暮らしたいという思いを持って帰還した人たちを、医療面でしっかり支えなければ」。児島は復興の一翼を担う使命の重さを胸に言葉に力を込めた。(文中敬称略)

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患者に関する情報の共有を図る門馬さん(中央)ら看護師。救急外来との掛け持ちをしながら訪問看護に取り組む
患者に関する情報の共有を図る門馬さん(中央)ら看護師。救急外来との掛け持ちをしながら訪問看護に取り組む

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