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重陽の芸術祭(9月20日)

 酒に菊を浮かべ長寿を祈る。九月九日の「重陽[ちょうよう]」の節句にちなんだ芸術祭が二本松市で始まった。日本最大の規模を誇る菊人形と、日本酒の蔵元を多く抱えていることから誕生した。二年前から秋の恒例行事となった。
 先陣を切り「蔵カフェ千の花」の築百年となる蔵で、故榎倉康二[えのくらこうじ]さんの作品展が催されている。木や土を用いて、存在と知覚の在り方を問う現代美術の「もの派」作家として知られる。版画のシルクスクリーンで、しみ、にじみを通じて多様な世界を表現する。
 東京都内の男性が作品を所有し、展示を申し出た。昨年、観光誘客事業で市と関わり、二本松のファンになった。人と雰囲気に魅せられ、たびたび訪れる。芸術で地域を活気づける街を応援したくなった。会場が「風景と呼吸する」という作者の言葉に合うと感じた。日常のものが見方によって変わる世界に触れてほしいと願う。
 江戸時代の風情を残す景観と斬新な芸術の取り合わせが面白い。さまざまな人の思いが、歴史の街に新たな魅力を加える。来月には、新進気鋭の女流作家の個展が始まる。独自の死生観で無心に絵を描く実演も披露する。現代芸術の華が秋の城下町を彩る。

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