あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【安倍総裁連続3選】国民の声聴く政治を(9月21日)

 自民党総裁選は安倍晋三首相が連続三選を果たした。与党第一党の党首として国政を引き続き担う。勝利を受けて憲法改正への意欲を改めて示した。ただ、選挙戦では経済財政、災害対応などへの対策を語る一方、国民生活の根幹を成すエネルギー問題への言及がなかったのは残念だ。
 森友、加計学園問題など国民が知りたい件に関して、安倍首相は説明責任を果たしてきたと言い難い。ともすれば数の力に頼った強引な国会対応が目立つ。対立する意見を尊重する謙虚さを欠く。国民の声に耳を傾けて合意を目指す、丁寧な国政運営を望む。
 選挙戦で安倍首相は課題解決に期限を区切った。九条改正は「あと三年でチャレンジしたい」と意気込む。六十五歳以上の雇用継続の仕組みや七十歳を超えての年金給付開始を選択できるようにする社会保障制度改革、災害に備える国土強靱[きょうじん]化の緊急対策は、いずれも三年間で実施するとした。人口減少を迎えた地方自治の在り方と地方財政改革は二年といった具合だ。
 スケジュール意識を持って仕事をするのは悪くない。だが、合意に至る経過を重視する民主主義のルールの下で、政権の思惑優先で事を運ぼうとするのは独善に陥りかねない。改憲は特にそうだ。国民の間にはさまざまな意見がある。賛否が分かれ、議論が生煮えのまま国会採決や国民投票に持ち込むようなことになれば国論分裂の禍根を残す。
 社会保障制度や強靱化対策にしても、財源の問題が避けて通れない。来年十月には消費税率10%への引き上げが控える。景気や家計への影響を最小限度に抑え、国の収支均衡を図りながら、政策をどう実現するのか。わが国の財政は莫大な赤字を抱えている。国民が納得できる説明と慎重な議論が欠かせないはずだ。
 北海道地震で電力供給の弱点が露呈したにもかかわらず、選挙戦でエネルギー問題は触れられなかったようだ。道内の発電が停止し、国民生活にも影響を与えたというのに。政府は原子力への一定程度の依存を維持しようとするが、原子力発電所の廃棄物処理に向き合う熱意は伝わってこない。東京電力福島第一原発事故の収束に向けた廃炉や汚染水処理など本県の明日を左右する懸案への対応も聞くことができなかった。
 時事通信社の直近の世論調査で内閣支持理由のトップは「他に適当な人がいない」だった。「首相を信頼する」の二倍に上る。安倍首相は「強い指導力」を掲げるが、国民世論を侮った政治姿勢は、いつか行き詰まる。(鞍田炎)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧