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安倍政権、終わりの始まり(9月23日)

 自民党の総裁選で一九七八年、福田赳夫首相が大平正芳氏に敗れた。総裁選史上、現職の首相・総裁が敗北した唯一の記録である。四十年ぶりにこの再現を狙った石破茂氏だったが、善戦したものの安倍晋三首相の三選となった。
 それだけ現職は強い。安倍氏は党内七派閥のうち五派の支持を取り付け国会議員票で圧倒、党員票でも石破氏を抑えた。「安倍一強」といわれる政治状況そのままを反映した感であった。
 半面、党員の意識は国民の世論に近いといわれる。石破氏が二○一二年の総裁選で得た票は減らしたものの、党員票の45%を得たことは、党員は安倍政治に厳しい目を向けていることを意味している。
 自民党の国会議員が派閥単位で安倍支持に回ったのは、世論調査などでなお一定の支持率を得ており、安倍氏の下で政治を運営、選挙を迎えた方が得策だという判断であろう。確かに、安倍内閣支持率は40%台で支持と不支持が拮抗[きっこう]、支持が不支持をやや上回っている。
 しかし、詳しく見ると、支持の理由の第一は「ほかに適当な人がいない」であり、不支持のトップは「首相が信頼できない」が理由である。信頼できないとする背景は森友・加計学園にあることは疑いない。支持といっても消極的な支持なのである。
 森友・加計問題は首相夫妻、官僚、国会、つまり日本の政治や行政に深刻な疑義を提起した。首相は「責任」を認め、今後は「真摯[しんし]」「丁寧」に対応していくという姿勢しか語らなかった。石破氏は「正直、公平」をキャッチフレーズにはしたものの、それ以上の突っ込みはしなかった。
 この問題をさらに踏み込み対立軸として取り上げたら、どうだったのだろう。石破氏はアベノミクスが地方に恩恵をもたらしていないとして、農漁業など地方の再生、創生を重点的に訴えた。
 これは地方党員に一定の支持を得たと思われるが、具体策は示し切れなかった。経済のデータを列挙して実績を誇示する安倍氏をしのぐまでには至らなかった。
 この党員の声、さらに石破氏が獲得した国会議員七十三票を受けて、自民党の安倍一強、首相官邸主導に変化は生じるだろうか。つまり異論を認め合い、多様性をもった党に変われるかである。
 総裁選で憲法改正を前面に掲げた安倍氏は、今秋の臨時国会に自民党の改憲案を提示することに並々ならぬ意欲を示した。念頭にあるのは安倍案であるが、それで党内がまとまるのだろうか。
 総裁選で忘れてならないのは、投票権があったのは自民党所属の国会議員と百四万人の党員だけであったことだ。国政選挙の全有権者のわずか1%にすぎない。そして、総裁任期三年の終わりの始まりとなる。これまでのような強権的な手法で、改憲に突き進めるとは思えない。(元共同通信社編集局長、本宮市出身)

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