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寄り添う力(10月2日)

 連続テレビ小説「半分、青い。」の放送が九月二十九日に終わった。ヒロイン鈴愛[すずめ]の半生を描いた。漫画家になったかと思えば、郷里岐阜の郷土食、五平餅の屋台を引く。扇風機の開発にも挑む。次々と訪れる人生の転機を、テレビの前でハラハラして見守った。
 終幕間際、親友が東日本大震災で亡くなる場面があった。遺骨を抱き、主人公は涙に暮れる。七年前の悲しみを追体験した気持ちになった-。震災の被災者から声が上がる。描写に違和感を覚えるとの意見もネットに載った。
 北川悦吏子[えりこ]さんが脚本を手掛けた。数々のヒット作を発表した脚本家として知られ、華々しい経歴を持つ。自身も鈴愛と同様に片方の耳が聞こえない。テレビや雑誌のインタビューに答えている。病にかかり、今作も一部を病床でしたためた。「病に伏したからこそ、記せたせりふもあった」。
 深刻な被害をもたらす災害が相次ぐ。尊い命を奪い、思い出の詰まった古里を痛めつける。心に負った傷と向き合い、歩む人は少なくない。もはや誰もが被災する境遇になりかねない。北川さんが紡いだ物語は「あの日」に感じた命や隣人へのいとおしさ、自然への畏怖の念を残した。

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