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教育勅語復活の危機(10月7日)

 教育勅語は「現代風に解釈され、あるいはアレンジした形で、道徳などに使うことができる分野というのは十分にある」と述べたのは、第四次安倍晋三改造内閣の文部科学大臣の柴山昌彦氏である。それも大臣就任会見での発言なので、ショックを受けたのは私だけではないだろう。
 菅義偉官房長官は、教育勅語は「日本国憲法及び教育基本法の制定をもって、法制上の効力は喪失している。政府としては、積極的に教育勅語を教育現場に活用しようという考えはない」と述べたが、柴山発言の真意の確認は必要ないとも言い、この発言を否定はしなかった。
 この発言が他ならぬ文部科学大臣であることに私は大きな危機を感じている。文科省は政府の各省の中で直接的に国民の精神に関与する唯一の役所だからである。文化庁も文科省を通さなければ予算も財務省に出せない一庁で、いわば文科省の支配下にある。
 私たちは小学校で教育勅語を暗記させられ、君[きみ](天皇)や国のために喜んで自らの命を捧[ささ]げるように教育された経験を持つ。教育勅語はまさに国民をマインド・コントロールした最大の道具であった。
 柴山文科相は安倍首相の側近といわれているだけに、この発言は安倍首相の本音が透けて見えたように思われる。これから安倍首相は憲法改正(悪)を強力に進めようとしているが、実はその裏にこのような基本的な精神構造があるとすれば、憲法改悪の道がやがて本音を隠しながら広げられるだろう。今後、文科省が示す教育方針や文化の方向性などを注意深く見て、戦前の二の舞に陥らないようにしなければと思う。
 九月三十日に台風24号が本州を荒らし回っている最中に、沖縄県知事選挙で辺野古の基地化反対の玉城デニー氏が大勝したというニュースが飛び込んできた。私は思わず「よかった!!」と叫んだが、これは決して辺野古だけの問題ではないと改めて考え直し始めた。沖縄の人々は戦前、戦中、戦後を通して私などがとても口にできないような多くの苦難に耐えてきた。それがこの選挙の結果の根元にある。政府は「沖縄に寄り添う」といいながら、結局は「基地負担の軽減」というだけで、辺野古に反対するなら、国からの援助を減らすと脅しもしてきた。
 しかし、米軍の駐留が現在、何故[なぜ]どのように必要なのか、必要だとすれば、どれ位[くらい]必要なのか、また何故沖縄に駐留軍の70%を置かねばならないのか、他の土地では駄目なのかなどの問題をどう考えるか。鳩山元首相が口にしながら実際に何も成果をあげられなかった後は、この問題を何時[いつ]の間にか封じてしまったのではないだろうか。しかし、アジアの情勢も変わっている現在、もう一度、基本的な問題から考えねばと思う。
 沖縄の問題は日本の問題なのである。その解決の責任は日本人全部にあることを忘れてはいけない。
 (小島美子、国立歴史民俗博物館名誉教授、福島市出身)

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