あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【児童虐待通告最多】地域の総力挙げ防ぐ(10月8日)

 全国の警察が今年上半期(一~六月)に、虐待を受けているとして児童相談所(児相)に通告した十八歳未満の子どもは三万七千百十三人で過去最多だった。
 七カ所ある県内の児相への通告は三百九十七人で、前年同期の二百六十三人を百三十四人上回った。深刻化する児童虐待にどう向き合うべきなのか。関係機関だけでなく地域の役割も問われる。
 県内での内訳は、心理的虐待が全体の77%を占める三百九人で、前年同期の百九十五人から六割近い百十四人が増えた。そこには子どもの前で家族に暴力を振るうといった面前DV(ドメスティックバイオレンス)の二百七十九人が含まれる。身体的虐待が五十四人、育児放棄を意味する怠慢・拒否が三十四人だった。県児童家庭課は「今まで潜在していた案件が顕在化した印象」と受け止めている。
 厚生労働省によると、全国の児相が二〇一七(平成二十九)年度に対応した虐待件数は約十三万件で、十年間で三・三倍に増えた。対応に当たる児童福祉司は現在、約三千二百人で、増加は一・四倍にとどまっている。人員不足解消や専門性を高める取り組みが急がれる。
 東京都目黒区の船戸結愛[ゆあ]ちゃん(当時五歳)は今年三月、両親から虐待を受けて死亡した。「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」などと生前、平仮名でノートにつづった。本人は懸命にサインを発していたのに救えなかった。このような悲劇を繰り返してはならない。
 厚労省の専門委員会は三日、結愛ちゃんの事件に関して、転居前の香川県と転居後の東京都の児相がリスクを見極めず、情報共有に不備があったと指摘した。職員の資質向上や、医師・弁護士らの児相への配置推進、転居時における対面での事案引き継ぎの徹底なども国に求めた。虐待が疑われる家庭の転居は、介入逃れの恐れがあり危険性が高いとされる。
 香川県、東京都も対応の検証作業を進めている。実際に起きた事件について問題点を細かく洗い出し、弁護士や病院なども交えて実践的な研修を積み重ねる必要がある。
 通告最多の背景には、社会の関心が高まり、警察への通報が増えたことがあると警察庁はみている。困っている親がいたら手を差し伸べたい。地域の見守りが行き届けば、幼い命が犠牲となる重大な事態は防げるかもしれない。即効薬はないが、隣近所にいる子どもに目を向け、地域で守り育てる意識が事件防止の第一歩になる。(浦山文夫)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧