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希望をつなぐ(10月15日)

 鳥取県や島根県などの日本海側を抜けるJR山陰線に、普段は通らない貨物列車が走った。JR貨物が、西日本豪雨の後に設けた臨時便だった。物流を途絶させない。鉄道マンの意地と情熱がこもる。
 北海道や首都圏と、九州を結ぶ貨物便は瀬戸内海に沿う山陽線を使う。被災から一カ月半ほどたった八月末に、迂回[うかい]ルートで運行が始まった。山陰線などを経由し、岡山から幡生[はたぶ]を結んだ。安定的な物資の輸送は、人々の暮らしに欠かせない。
 東日本大震災でも、通常とは別の行程が一時設定された。不通となった東北線を避け、上越線と磐越西線などを走り、会津若松駅を経て郡山駅に至る。期待を込めて復興列車と呼ばれ、石油を運んだ。ディーゼル機関車の正面に「たちあがろう東北」のマークを掲げた。燃料流通の回復は人々に勇気を与えた。
 山陰線を走っていた貨物は、十三日発の便から元のダイヤに戻った。山陽線を利用する。しばらくは通常の九割ほどの輸送量にとどまる。自然災害による鉄道への被害が全国で相次ぐ。県内でも常磐線、只見線の全線復旧に向けた努力が続く。人や物を運ぶ鉄路のつながりは、復興を期する人々の希望も乗せる。

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