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【地域再生】生かせ自転車の可能性(10月16日)

 週末になると県内各地でサイクリングやロードレースなど自転車の大会が開かれ、県内外から多くの選手や愛好者が訪れる。スポーツとして人気を集める自転車だが、受け皿を整えれば、有効な地域振興策にもなりうる。厳しい環境に置かれている震災と原発事故の被災地や中山間地域の再生・復興にも生かせるはずだ。
 自転車の大会はタイムや順位を競う競技系と、走りを楽しむレクリエーション系に大別できる。福島民報社が関わっている事業でいえば、「ツール・ド・ふくしま」として今年シリーズ化された大会などは競技系、先月開かれた「相馬復興サイクリング」や来月に予定されている「ツール・ド・いわき」などはレクリエーション系だ。
 参加者層などに違いがあるものの、地元にとって地域の多様な環境を資源として活用し、人を呼び込める点は共通する。競技系の場合、「交通の難所」とされる山間部の道路と、難所ゆえの交通量の少なさが競技者向けの技術と体力が必要なコースの設定を可能にする。コース設定の自由度が高いレクリエーション系は山、渓谷、海、湖など周辺の地形や景観が変化に富むほど愛好者にとって魅力が増す。給水・給食ポイントやゴール地点では地元の「食」などもアピールできる。
 さらにマラソンやランニングなどに比べ、広域的な移動が容易なのも特徴で、レクリエーション系のロングコースは百キロ前後が主流だという。「相馬復興サイクリング」では相馬市内から飯舘村の真野ダムまで登った後、南相馬市を経由し、相馬市、新地町の海岸沿いを巡るロングコースを設定したところ、募集開始初日に定員に達した。当日は雨でショートコースのみになり、参加者からは残念がる声が相次いだ。
 広い県土には豊かな自然があふれ、さまざまな文化が息づく。観光振興や交流人口の拡大に生かしたいと思っても、その広さゆえ実際に足を運んでもらうのは容易でない。まずは動機づけが必要だし、二次交通などの移動手段も欠かせないだろう。自転車はこうした課題を一気に解決する力を秘める。
 愛媛県などでは既に自転車と観光を組み合わせた「サイクルツーリズム」と呼ばれる取り組みを推進している。多彩なコースや充実した休憩・サポート施設、きめ細かな情報提供体制などの受け皿を整え、通年で国内外からの誘客を図っている。先進事例などを参考に県内でも知恵を絞るべきだ。(早川正也)

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