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被災地をつなぐ思い(10月17日)

 北海道千歳市の丸駒[まるこま]温泉旅館は雄大な支笏湖[しこつこ]を望む。天然露天風呂のファンが多い。創業百三年を迎えた。三代目の佐々木金治郎さんは富岡町で生まれ、初代が始めた旅館を継いだ。
 古里をいつも気に掛けていた。震災と原発事故後は道内に避難した人を見舞う。復興を見届けられず、二〇一五(平成二十七)年に七十三歳で亡くなった。思いは息子の義朗[よしろう]さんに引き継がれた。夕食で二本松市の銘酒を振る舞う。ひな祭りの季節には福島市飯野町の「つるしびな」を飾る。福島の様子を伝える福島民報も置いた。東北の本当の姿を知ってほしいと願う。
 九月の地震で大きな傷を負った厚真[あつま]町から約八十キロの距離がある。旅館の施設に目立った被害はなかった。それでも予約の取り消しが相次いだ。地震から間もなく一カ月半だが、千三百人を超す。余震のたびに問い合わせが来る。県内の親類、友人から電話やメールで励まされる。今が我慢のしどころと、自らを奮い立たせる。
 道内の被災地には本県から応援に入った。震災と原発事故を経験し、感謝の気持ちで道民に寄り添う。風評の苦しみも分かる。「困った時はお互いさま」。思いはつながる。

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