あぶくま抄・論説

論説

  • Check

【西会津の廃校利用】発想変え地域の宝に(10月18日)

 西会津町は、廃校になった学校を役場庁舎や文化施設に再利用している。少子化で小中学校の再編が進み、必要がなくなる文教施設は全国的に増加する傾向だ。県内外の市町村から問い合わせや視察がある。廃校活用の参考例を広く示してほしい。
 町役場の旧庁舎はJR野沢駅の近くに一九六三(昭和三十八)年に建てられ、半世紀余りがたっていた。同規模の庁舎を新築した場合、少なくとも二十億円は必要と町は試算した。単純に比較はできないが、町の一般会計は二〇一七(平成二十九)年度決算でみると六十九億五千万円余だ。町政に支障を来さないよう数年がかりで計画を練った苦労がにじむ。
 二〇一五年三月に閉校した三階建ての旧西会津小に、白羽の矢を立てた。旧庁舎に近く、二〇〇九年に耐震化工事を終え、この先、数十年は使える見通しがあった。試算の半分以下に収まる約九億円で改修を終え、今年七月に新庁舎で業務を開始した。
 教室ごとに区分けされていたため、各課の配置には当然、制約が出た。職員にとっては窮屈とみられた。だが、最優先すべき点は、町民の利便性を確保し、高められるかにある。廊下の壁をできるだけ取り払った。学校特有の閉ざされた空間をなくし、エレベーターや町民ホールを設置した。多くの町民が訪れる税務や福祉関連の部署は一階に配した。三カ月が過ぎ、苦情はない。駐車場は校庭だったため広く、利用者に好評だ。
 町内には全国的に知られる文化施設もある。木造二階建ての旧新郷中を利用した西会津国際芸術村だ。二〇〇二年に閉校した校舎の、ほぼ原形を残し、二〇〇四年に開村した。芸術関連のNPO法人と連携し、町の直営施設として運営した。今年度から指定管理者制度を導入した。
 山間部は新潟県境に位置し、過疎化が進む。立地条件の悪さから当初は、いつまで存続できるかと懸念する声もあった。住民との触れ合い、静寂な環境、木のぬくもり…。芸術家の卵を育てるには十分だった。これまでに国内外から二百人ほどの若い芸術家が訪れた。短期滞在し、文化を発信する。公募展は今年で十三年目を迎え、全国から毎年、作品が寄せられる。数年前からは年間四千人近くが来館している。
 子どもたちの声が消えた学校施設は、地元にとって「負の遺産」になりかねない。しかし、発想の転換で息を吹き返す。再生を進めることで、地域と住民の大切な財産に生まれ変わる。(小林和仁)

カテゴリー:論説

論説

>>一覧