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医師の適性とは(10月18日)

 学生寮にまつわる思い出話は、そこで過ごした人なら誰もが持つ。三十年近く前の平成の初めごろ、仙台市にある予備校の男子寮には、いかにも「ぬし」という雰囲気の寮生がいた。
 すでに二十歳は超えているようだった。身の上をあまり語ろうとしない。詳しい素性は謎に包まれていた。ただ黙々と勉強する姿が印象的だった。医者の息子で、医学部を目指している三浪生だと寮生の一人が話していた。
 医学部医学科を置く全国の複数の大学が、入学試験で浪人生や女子の受験生を不利に扱っていた。文部科学省は大学名を公表していないが、ある大学は得点操作を認めた。医師になるには大学入試や国家試験の難関を乗り越える必要がある。しかし、学力は努力次第で伸ばすことができる。浪人生は家庭や経済的な事情を抱える場合もある。浪人するだけで適性が疑われるというのは違和感しかない。
 三浪生が念願を果たしたかは分からない。しかし、悔しさに耐え、踏ん張る強い心の持ち主であったかもしれない。病気やけがで苦しむ人たちは親身になって寄り添ってくれる存在が何より心強い。人の痛みを知り、患者に愛される医師になっているといい。

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