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【農福連携】支え合いの輪広げよう(10月22日)

 障害者雇用の場として農業を活用する「農福連携」が県内でも広がりを見せている。人口減少と高齢化が進む中で、誰もが参加して共生できるまちづくりにつながる。取り組みに対する理解がさらに深まることを望みたい。
 高齢化や担い手不足に直面する農家と、受注作業の減少に悩む障害者福祉の事業所が連携することで、双方の課題が解決しやすくなる。
 県内の二〇一六(平成二十八)年の農業人口は約六万三千六百人で、二〇〇〇年の約十四万七千五百人の半数以下まで落ち込んだ。平均年齢も上昇し、二〇一六年は六七・九歳となった。水田や畑を集約する営農の大規模化が進んでいるが、農村部から人口が流出する中、人手不足が課題となっている。
 泉崎村の社会福祉法人こころんは「農福連携」として直売カフェこころやを運営する。同法人は遊休農地でキクイモやオクラなど約五十品目を栽培する。カフェでは、生産・加工・販売に約三十人の障害者が働く。売り上げを年々伸ばしている。賃金に当たる「工賃」は全国平均で月約一万五千円だが、こころんは約二万五千円だという。周辺の農家にとっても頼りになる存在で、「共存共栄」の関係を築き上げている。
 仲間や職員と声を掛け合い体を動かすことで社会性や体力が付き、一般の仕事に就職していく人も多い。働く場としては農業をきっかけにして、林業や漁業、後継者不足の商店街など地域の事情に合わせて裾野を広げていくことも可能ではないか。
 東北農政局が事務局となる「東北地域の農業分野における障がい者就労促進ネットワーク」には県内から十八団体が加盟する。同農政局は「新たな労働力という考え方で施策を進める」と説明する。個々の障害者ができることと農家が求める仕事をうまく橋渡しし、障害者が自立できる環境づくりを進める上で行政の果たす役割は大きい。
 ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が今月七日、泉崎村を訪れ、「農福連携」の実践例を視察した。同国では長く軍事独裁政権が続いていたが、二〇一一年、民政に移管した。経済自由化とともに都市部への出稼ぎが増え、農村で人手不足が深刻化しているという。地方からの東京一極集中が続き、人口の偏在が指摘される日本と重なる部分もある。
 スー・チー氏の視察による「農福連携」への注目を追い風に、国や県と協力しつつ、支え合いの社会の深化を図るべきだ。(浦山文夫)

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