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新しく、重い役割(11月1日)

 富岡町の六号国道沿いに、洋風の家を組み合わせた建物が立つ。三人の生家を外観の手本にしている。エジソン、アインシュタイン、キュリー夫人。電気や放射線などの科学の歴史に大きな足跡を残す。
 富岡町と楢葉町には東京電力福島第二原発が立地する。建物は「エネルギー館」と名付けられた。発電所と地域の橋渡しを担い、開館から三十年がたつ。発電の仕組みや地域の情報を紹介し、科学教室や音楽会も開いた。町内外の人々が学び、遊び、親しんだ。震災後に閉じられ、にぎわいは消えた。
 十一月三十日、新しく、重い役割を背負い、再び動きだす。東京電力廃炉資料館と呼ぶ。事故の記憶と記録を残す。反省と教訓を受け継ぐ。廃炉の取り組みと進み具合を分かりやすく知らせ、広める。国内外から知恵を持ち寄る場ともいえよう。
 東電の旧経営陣の公判が続く。民事裁判で償いの在り方も争われている。原因や責任を明らかにする営みは、裁きに臨む当事者にのみ委ねられているわけではない。原子力には政治、行政、経済、科学、司法、言論などの多くの組織と人が関わってきた。それぞれが自らへの問い掛けと戒めを忘れてはならない。

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