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【石川の重謙屋敷】自由民権運動を学ぶ(11月2日)

 戊辰戦争と明治改元から百五十年の今年は、さまざまな事業が県内外で繰り広げられている。歴史の断面を振り返るだけでなく、その後の時代の流れも学ぶべきだ。その一つが自由民権運動だ。本県でも明治十年代に活発化した。
 運動は明治の藩閥政府に対抗し、国会の開設や憲法の制定を政府に求めた。石川町は県内の運動発祥地の一つとされる。町は拠点となった町指定文化財の「鈴木重謙[じゅうけん]屋敷」を復元し、今年八月に開館した。鈴木荘右衛門[しょうえもん]と養子の重謙の屋敷で、行政事務所の区会所や郡役所に使われた。初代区長は河野広中[こうのひろなか]が務めた。河野は運動を主導し、百四十年前の一八七八(明治十一)年、東日本初の政治結社「石陽社」(前身の「有志会議」は一八七五年に発足)を設立した。運動家や、河野の主張に共感した人々が出入りした。屋敷には政治参加の実現を求めた息吹を感じる。
 屋敷内には歴史資料や解説パネルを展示する。土間や座敷は休憩施設、集会施設として利用できる。開館から二カ月間ほどで県内外の約九百六十人が見学したり、利用したりした。観光や文化を発信し、にぎわいづくりの場にもする町の考え方は注目される。十月三十一日には戊辰戦争の特別展が始まった。今後も多くの来館があるよう一層の工夫を凝らしてほしい。
 県立石川高と学法石川高の一部生徒は屋敷に定期的に集まる。町民交流の場として、いかに使うべきかを話し合い、イベントを計画する。町の担当者は、高校生が屋敷を実際に使って活用法を考えることで歴史学習の動機付けになると期待する。
 町内には石陽史学会、石陽社顕彰会といった団体がある。史学会は今年八月、「岩谷巖[いわやいわお]日記」を発刊した。岩谷は運動家の一人で石陽社や河野らの活動を日記に残した。完全翻刻した日記は当時の社会情勢を研究する上で貴重な資料となる。代表委員の鈴木吉重さんは「有志会議が石陽社になるまでの過程がはっきりしなかったが、日記でその動きが分かる。河野の考え方も読み取れる」と話す。顕彰会は運動の冊子を作り、町内の中学二年生に毎年、配布する。学習会も開いている。こうした活動は郷土史に触れる機会を町民に与える。
 三春町には自由民権記念館があり、資料を展示する。喜多方市は、現在の知事に当たる県令の三島通庸[みしまみちつね]が多くの運動家や農民を弾圧した事件の舞台となった。石川町をはじめ、ゆかりの地の訪問は、運動への理解を深めるきっかけになる。(川原田秀樹)

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