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社会合意(11月11日)

 昨年の十二月中旬、米国ハンフォードのプルトニウム最終処理プラントの建屋を解体中に立ち入り禁止区域外で放射能汚染が見つかった。作業員の健康調査が行われたが、今年七月の発表では、幸いにも高い人で管理限界値の千分の一であった。解体作業は停止され、現在も止まっている。ワシントン州から作業開始の許可が出るのは更[さら]に二、三カ月かかる予定だ。
 プルトニウムの汚染は微量でも社会への反響は大きく、ツイッタートップの話題となり、今年八月末でもツイッターの「時の話題」として取り上げられた。
 国内では豊洲市場の安全性の議論が交わされていた。地下水から微量のベンゼンが検出されたのが発端だったが、築地市場からの移転は無事行われ、十月十三日の一般公開の初日、沢山[たくさん]の来客があった。父は築地で仲買商を営んでいて、私は近くの川でボート遊びはしたが、川の魚は食べたりはしなかった。ここで大きな議論になったのは安全・安心の、社会に与える不安感だ。消費者に安心をしてもらえるような社会合意を得るのは大変難しい。
 二〇一六年十一月から多核種除去装置による処理水の取り扱いに関わる小委員会が、二年の議論を踏まえ、八月末に富岡、郡山と東京で公聴会を開いた。公聴会が開かれる前に処理水の一部に基準値を超えたトリチウム以外の放射性物質が含まれているとの報道があり問題となった。
 この小委員会の役割を考えてみた。委員は消費者問題、持続可能な環境社会、水産、経済、風評被害等の様々[さまざま]な分野の原子力以外の有識者で、「風評被害」、「合意形成のあり方」が議論されたので、社会合意を思考する「コンセンサス会議」の位置づけと考えられる。
 コンセンサス会議では専門知識を持たない市民からなる市民パネルが、専門家から必要な知識を受けて、最終的に市民だけで社会合意を作り上げる。市民中心の会議だ。当然ながら、全ての情報は会議の中で分かりやすく提供される。従って、トリチウム以外の物質が基準以上含まれていれば会議の中で説明されるべきだった。また安全に係る情報は規制側が責任を持つのだから、小委員会で規制当局が全ての情報を開示し説明すべきでもあった。
 気になる点がもう一つある。汚染水は現在も一日約百四十トン発生し、今後ある程度減少し、例えば一日約百トンに減ったとしても三十年経[た]てば約百万トンになり、現在タンクにある九十二万トンを超える。議論にはこの情報も含め現在分かっている全ての情報を提供しないと意味がない。
 公聴会では、全国レベルでの議論が必要との指摘が漁業関係者からあった。影響を受ける太平洋側の漁業関係者や関東、関西に代表される消費者に対する説明だと思う。ただ、本紙のトリチウム水処理方法に関する世論調査では、「処理方法が分からない」と説明不足を感じている県民は約半分だ。まだ全国へ理解を広める以前の状況に思える。(角山茂章・会津大学前学長)

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