あぶくま抄・論説

あぶくま抄

  • Check

幻の国(11月17日)

 「石城国[いわきのくに]」が建国され、今年は千三百年の節目を刻む。奈良時代の七一八(養老二)年、現在の東北地方の太平洋側に当たる陸奥国[むつのくに]から、宮城県の南側と本県の浜通りが分けられた。
 石城、標葉[しねは]、行方[なめかた]、宇太[うだ]、日理[わたり]の五つの郡と、常陸国[ひたちのくに]の菊多[きくた]郡による国を設けた。国のあらましをつづる「続日本紀[しょくにほんぎ]」は記録を残す。当時の政権は陸奥国以北に勢力を広げるため、統治が行き届いた南側を区切り、最前線を支えようとしたという。翌年、現在の六号国道のような南北を貫く陸路を整えた。馬を置く駅家[うまや]を国内に十カ所作り、人や物を運んだ。
 わずか三年で国は消え、再び陸奥国に編入される。蝦夷の反乱を受け、北方の兵力を強めた。行政や裁判を担った国府はどこにあったのか、国を治めた国司は誰なのか…。郡の役所跡はそれぞれの地で発掘されている。だが、石城国を示す遺跡や遺物は何一つ見つかっていない。「幻の国」とされる。
 古墳時代のいわきや石城国などを題材にした報告会が十二月一日、いわき市内で催される。市教育文化事業団が参加を募る。「この地の始まりを知ってほしい」。歴史研究者の情熱が、長い年月の一瞬を照らし出す。

カテゴリー:あぶくま抄

あぶくま抄

>>一覧