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富岡一小(11月18日)

 富岡一小の教室に、子どもたちの書や絵画が張られた。保護者や地域の人が懐かしそうに見つめる。当たり前の光景のようだが、そうではない。七年八カ月にわたり閉ざされていた富岡町の校舎に十、十一の両日、町民が初めて入った。
 震災前、四百人を超える児童が通っていた。三月十一日、激しい揺れが襲う。石造りの校門は倒れ、教室にいた子どもがグラウンドに逃げ出す。すぐに、避難所に指定された町体育館に移った。それから学校に歓声が響くことはなかった。昨年四月一日、居住制限と避難指示解除準備の区域が解除された。教室、げた箱には荷物や靴がそのまま残る。
 二つの教室が展示室となり、次々と町民が訪れる。元のコンピューター室には、中央商店街の模型や昔の写真が並ぶ。普通教室には富岡小中富岡校と三春校の四十二人の作品を飾った。当時小学一年生だった三春校の中学三年生は毛筆で「未来を切り拓[ひら]く」と力強くしたためた。
 校庭では秋の風物詩だった、えびす講市が開かれた。さまざまな世代の卒業生がステージに立ち、草野心平作詞の校歌を合唱した。「おお富岡一小 われらが母校 かがやく未来」。思いはきっと届く。

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