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「おとう飯」の味(11月19日)

 幼い頃に食べた父親の料理が忘れられない。母親が風邪で寝込んだり、留守だったりした時が多い。台所に立つ後ろ姿が思い浮かぶ。
 子育て世代の男性が作る料理を「おとう飯[はん]」と呼ぶ。内閣府が家事への参加を促す取り組みで名付けた。福島市は今月から「男の料理」を写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿するよう呼び掛ける。二十五日には市内のアオウゼで男性だけの料理教室を開く。興味のある人が腕前を上げるきっかけになる。
 川内村出身、富岡町育ちのミュージシャン渡辺俊美さんは七年前、高校生の一人息子のために弁当を作った。昼食を買うお金より、父が作る弁当がいいと言う子どもとの約束だった。三年間、毎日続けた。「親子が思いを伝え合う手紙の代わりになった」と著書で記す(マガジンハウス「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」)。ぬくもりある味と感謝の気持ちは一生忘れない。
 男性にとって掃除や洗濯より料理が一番難しいかもしれない。食べる人が喜ぶと思うなら、やる気も湧いてくる。手間を掛けなくても、見栄えが悪くてもいい。愛情を込めれば、おいしさは伝わる。時には家族のために腕を振るってみよう。

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