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窯の火を守る(11月28日)

 窯元の主[あるじ]と客が再会のあいさつを繰り返す。「久しぶり」の言葉と笑みが行き交う。懐かしさのあまり、話し込む。店先は互いの近況を確かめ合う場にもなった。
 先週末に開かれた浪江町の十日市祭で、大堀相馬焼の「大せとまつり」が八年ぶりに復活した。震災前には毎年五月の連休に地元の大堀地区で催された。二十余りの窯元が自慢の器を並べた。原発事故で避難指示が出され、地区の復興は見通せない。故郷を離れてもなお、陶芸の火を絶やさない窯人たちが集まった。
 青いひび割れが地模様として器に広がる。相馬藩の御神馬が疾駆する「走り駒」を年季の入った筆遣いで描く。二重焼の仕掛けは湯が冷めにくい上に、熱い湯を入れても手に取りやすい。意匠や絵付けに現代風の工夫を凝らした作品も増えている。出店数はかつてに及ばなかった。だが、江戸時代からの技術を守る意志と、再興にかける思いは強い。
 全国の伝統工芸品や地域の特産品を、東京五輪・パラリンピックの公式ライセンス商品とする提案の募集が始まった。大堀相馬焼は国の伝統的工芸品に指定されている。浜通りの被災地に残る文化や誇りを世界に伝える機会を探ろう。

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