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【大学再編】地域と共に将来を描く(12月5日)

 文部科学相の諮問機関である中央教育審議会(中教審)は少子化を踏まえ、大学の連携や統合を進める具体策を打ち出した。生き残りを懸けた再編を促す提案だ。県内の大学は主体性を持ち、地域と共に自らの将来像を描く必要がある。
 中教審は連携や統合の方法として、(1)国立大学法人が統合し、一つの法人が複数の大学を持つ(2)私立大が学部単位で他大学に事業譲渡する(3)国公私立の垣根を越えて連携推進法人をつくる-の案を示した。関連する制度の改正を急ぐよう国に求めている。
 文科省の推計によると、二十二年後の二〇四〇年度の大学進学者数は二〇一七(平成二十九)年度より二割少ない約五十一万人になる。進学率が上がっても人口減の影響は補えず、大学の規模を維持するのは難しい。中教審は「教育の質を保証できない高等教育機関は社会から厳しい評価を受け、撤退する事態に至ることもあり得ると覚悟しなければならない」と指摘する。
 県内には短大を含め国立一、県立二、私立八(日大工学部を含む)の計十一大学がある。各大学の今年度の入学定員を合計すると、約四千四百人だった。文科省の推計(短大を除く)では、本県の大学が現在の定員を維持すると仮定した場合、二〇四〇年度の入学者は定員の七割程度にとどまる。各大学、短大は将来の在るべき姿を模索する。学内だけではなく、地域全体を見渡す戦略が欠かせない。
 福島市やいわき市の大学、短大、高専は地元の自治体や経済団体と人材育成や地域活性化を目指す連携協定を結んだ。福島民報社をはじめ県内の企業や団体と協定を交わす大学も増えた。こうした枠組みを生かして、教育、研究、産業との関わりなど、あらゆる面で方向性を探る取り組みが大切だ。大学進学者の多くを占める十八歳人口が減る中、社会人の学び直し、留学生受け入れによる学生確保をどう考えるかも課題になる。
 全国で再編の動きが出始めた。国立大では「帯広畜産大と小樽商科大と北見工業大」「名古屋大と岐阜大」などの組み合わせで経営統合の検討が進む。自治体が私立大を公立化する例も増えている。中教審が示す案の実効性は見通しにくい。若者の地元離れにつながらないかを慎重に見極めなければならない。
 震災からの復興に県内の大学が果たす役割は大きい。人口が減るから大学や地域をどうするかという議論に加えて、大学を生かして人口の維持、増加を目指す攻めの視点を持つべきだ。(渡部育夫)

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