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小室青年を支えた人々(12月14日)

 暮らしが豊かでなくとも困っている人に手を差し伸べる。それを当たり前と思う人たちがいた。社会学者の小室直樹さん(故人)は、そんな人々に囲まれていた。一九八〇(昭和五十五)年、「ソビエト帝国の崩壊」を著し、ソ連の最後を予言した。
 柳津町で育ち、終戦後の会津高生時代、授業料の滞納で退学寸前となる。見かねた教師が彼の本を買い上げてくれて、やっと学費を支払えた。別の教師は食事に事欠く姿を見て、涙ぐみながら弁当を与えた。京都大を受験した際には、なけなしの旅費を盗まれ、会津まで徒歩で帰る羽目になる。先々で出会った人の世話になり、無事に家に帰った。
 逸話は出版されたばかりの「評伝 小室直樹」(村上篤直著、ミネルヴァ書房)に詳しい。型破りの言動から奇人とも呼ばれた。だが、真剣に学問に打ち込んだ背景には、こうした見返りを求めない応援があった。お年寄りを狙う詐欺や幼児虐待など、弱者を傷つける犯罪が後を絶たない。だからこそ、優しさが心に染みる。
 師走の街で募金への協力を求める呼び声が聞こえてくる。わずかな金額であっても小箱に投じよう。第二、第三の小室青年に役立ててもらうために。

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