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あおり運転判決(12月15日)

 福島市内のカー用品店で、店員が複雑な表情で語る。「あの事件以来、ドライブレコーダーは販売が右肩上がりです」。東名高速道路のあおり運転で夫婦が死亡した「あの事件」。横浜地裁は十四日、被告に懲役十八年を言い渡した。
 駐車の仕方を注意された被告が一家四人の乗ったワゴン車を追跡した。強引な妨害運転を繰り返した揚げ句、追い越し車線に停車させた。ワゴン車の夫婦は大型トラックに追突され死亡した。世間は事件の異様さに言葉を失う。深い心の傷を負った年若い遺族を思い、胸を痛める。
 被告は裁判員裁判で「かちんときた。むかついて追い掛けた」と動機を述べたという。人がある状態になることを「スイッチが入る」と表現するときがある。犯行に至ったスイッチは、どのようなものだったろう。怒りの暴走が引き起こす結果と代償の大きさに、少しでも思い至ることはなかったか。
 車間距離が不十分だったとする道交法違反で、県警は今年、十一月末までに百十七件を摘発した。肝を冷やした程度ならば、もっと多いだろう。カー用品店で聞いた店員の「自分で自分を守るために、買っていかれます」の言葉が重く心に響く。

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