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火の用心(12月19日)

 「火の用心」の四文字は只見町民にとって特別な意味を持つ。数え年で六歳の子が毎年、書き初めのお題にする。「むさい」と読める六歳に無災の願いを重ねる。字が上手かどうかは関係ない。のびのびと書き上げ、半紙は縁起物となる。各家庭に配られ、神棚や台所などに掲げる。
 郷土史を研究する八十代の男性も幼い時に筆を執った。一月二日の朝、家族全員が見守る。五、六枚を仕上げ、隣近所に届けた。「もう六歳なんだね。大きくなったなあ」。親戚が玄関で出迎え、頭をなでてくれた。ご褒美のお年玉がうれしかった。
 古くからの風習も少子化のあおりを受けている。一年間の無火災を願い、半紙を手に入れたいが、近所に適齢の子がいない。職場の同僚や知り合いのつてを頼る。書き手も容易でない。一人で百枚以上を配ったとの話もある。一日に書ける枚数は限られる。正月だけでは間に合わない。
 人口四千二百人の町で、新年に対象となる二〇一四(平成二十六)年生まれは二十人ほどにとどまる。今年も幼児は忙しい年の瀬を迎える。町民は寒さに耐えて年明けを待つ。「火の用心」と一緒に笑顔が届く。住民をつなぐ風習の灯は消えない。

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