あぶくま抄・論説

あぶくま抄

  • Check

悔恨の砂丘を越えて(12月31日)

 日記は最後のページを迎えた。三百六十五日目、何をつづるか、悩みつつ、思いを巡らす。きのうまでを振り返り、一年をまとめようか。
 孫が高校や大学に合格した。子どもが望み通りの仕事に就く。父や母と久しぶりに遠出の旅をする。うれしい出来事や楽しい思い出が多いほど、満ち足りる。大切な家族を失う。親しい友人と仲たがいした。仕事で失敗する。つらかったり、怒ったりした日もあった。
 自然が猛威を振るう。西日本を豪雨が襲い、約二百二十人の尊い命を奪う。台風も相次ぐ。大阪や北海道で大きな地震が起きた。夏の暑さは「災害級」と呼ばれる。県内でも千六百人ほどが熱中症の疑いのため救急車で運ばれた。多くの人が大小さまざまな厄難に惑わされただろう。
 矢吹町で生まれた詩人の大滝清雄さんは今年、八十四歳で亡くなって二十年がたつ。教職の傍ら詩作を重ね、「聖火」という作品を残す。〈きらめく真新しい火がともる 新年の灯! いのちの聖火!〉。除夜の鐘の余韻の中、湧き上がる期待感を詠んだ。〈過ぎた日々の悔恨の砂丘を越えて 新しい希望が目覚める〉。この一節を心に刻み、あしたは真っ白なページを開く。

カテゴリー:あぶくま抄

あぶくま抄

>>一覧