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【沖縄の基地問題】福島から考えよう(1月9日)

 政府は昨年末、沖縄県宜野湾[ぎのわん]市の米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸部に土砂投入を始めた。沖縄県民に根強い反対がある中、新基地建設は新たな段階に入った。移設の賛否を問う県民投票への不参加を表明する自治体があり、県内は揺れている。安全保障は国民全体に関わる問題であり、福島県からも現地の状況に目を向ける必要がある。
 沖縄県内で基地問題を取材する機会があった。「米軍基地は沖縄に集中している。辺野古移設を進めるのではなく、基地負担を軽減してほしい」と複数の県民が話した。
 終戦後、沖縄県内では米軍が住民の土地を強制収用し、基地を建設した。福島県出身の高橋哲哉東京大大学院教授は、沖縄の基地問題の研究を続けている。全国に分散駐留していた米軍海兵隊が沖縄県内に移駐した経緯を取り上げ、本土からの隔離措置だったとの見方を示す。
 米兵が引き起こす事件、米軍機の不時着などトラブルも絶えない。「世界一危険」とされる普天間飛行場を移設すると説明されても、「県内の別な場所に、また基地を造るのか」と反発が出るのも当然だろう。玉城デニー知事の「民意をないがしろにして工事を進めるのは、民主主義国家であってはならない」という言葉が、多くの県民の気持ちを代弁している。
 一方、現地の取材で「辺野古移設反対が沖縄県民の総意という論調があるが、そうではない。普天間の危険性を一刻も早く取り除いてほしいと考える人もいる」との意見も聞いた。昨年九月に行われた沖縄県知事選では、玉城知事が三十九万票余を獲得したのに対し、安倍晋三政権が支援した候補者は三十一万票余を得た。民意は分かれた。
 全国知事会は昨年七月、「米軍基地負担に関する提言」をまとめた。「施設ごとに必要性や使用状況を点検し、基地の整理・縮小・返還を積極的に促進すること」と訴えた。辺野古に代表される沖縄の基地問題に関し、知事同士が意見を深めて国民の関心を喚起するべきだ。
 東京電力福島第一原発事故では、一つの市町村の中で賠償に差が生じるなど、住民から一体感を奪う対応がなされたとの指摘がある。安全保障と原発問題を同じ俎上[そじょう]で語れないが、国策という点で共通する。福島と沖縄は福島空港からの定期路線を活用して交流を深めた。沖縄には大戦で犠牲となった福島県出身者が祭られている。米軍基地の在り方について、福島から考えを深めよう。(菅野龍太)

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