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【節目の被災地】復興の面的拡大を(1月17日)

 東京電力福島第一原発事故で全町避難が続いている大熊、双葉両町の一部地域で、今年から来年にかけて避難指示が解除される見通しになっている。これにより避難区域が設定された十二市町村すべてで復旧・復興に向けた取り組みが本格化する。大きな節目であり、国と県は改めて被災地全体を見渡し、地域再生を面的に拡大する施策を講じるべきだ。
 大熊町は居住制限区域の大川原地区に整備中の町役場新庁舎での業務を五月七日にも開始する。併せて大川原地区と避難指示解除準備区域の中屋敷地区の避難指示を解除する見込みだ。双葉町は避難指示解除準備区域の中野地区で産業拠点の造成を始めており、中野地区と特定復興再生拠点区域に位置するJR双葉駅周辺について二〇一九年度末の避難指示解除を目指す。
 それぞれの町内ではJR常磐線の復旧作業や常磐自動車道の新たなインターチェンジの建設が急ピッチで進められている。災害公営住宅やスーパーマーケット、産業交流センターなども含め、住民生活や経済活動の基盤を順次、整える予定で、今年は地域再生への第一歩を踏み出す重要な一年になる。
 両町の動きが本格化する意義はそれだけにとどまらない。浜通り地方は事故後、帰還困難区域によって南北に分断されてきた。福島第一原発を挟んで北と南から進められてきた復旧・復興の取り組みが大熊、双葉両町で結び付けば、被災地の状況を好転させる環境が整うことにもなる。
 二〇一七(平成二十九)年春に先行して避難指示を解除した富岡、浪江両町では、隣接する大熊、双葉両町の一部地域の避難指示が解除されることによって人やモノがこれまで以上に動き始める可能性がある。さらに、各市町村や帰還した住民が個別に試みている再生事業のエリアを広げたり、復興を妨げる「壁」を広域的な連携によって取り払ったり、これまでとは違った手法や枠組みで双葉郡や浜通り地方全体の再生・復興を考えられるようになるだろう。
 新年度を控え、国、県は生活基盤の整備、産業の再生・振興、医療福祉の維持・向上、にぎわいの創出など分野ごとに現状の課題を洗い出し、今後の被災地全体の状況変化を視野に入れ、施策の見直しを進めるべきだ。また、事業推進に当たっては東電を含め国、県、市町村、住民らが連携して対応できるようにする仕組みづくりも求めたい。市町村ごとに異なる復旧・復興の進度差を埋める手だてにもなるはずだ。(早川正也)

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