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国内外で行き詰まった原発(1月27日)

 その発言には違和感を抱いた。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)の講演を聴いて、である。停止中の原子力発電所を「どんどん再稼働すべきだ」と述べて物議を醸していたが、この講演で中西氏はさらに「核技術を放棄するのは人類に対する裏切りだ」とまで言い切った。
 その論理はこうだ。電力は現在八割が化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)で賄われている。だが、化石燃料は無尽蔵ではないし、地球温暖化の原因にもなっている。再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力など)は「高コスト」。従って、原発以外ないのだという。
 日立は三菱重工業、東芝と並ぶ原発メーカー。そのトップでもある中西氏は年頭の会見で「国民が反対するものはつくれない」「全員が反対するものを業者や日立といったベンダーが無理してつくることは民主国家ではない」と語り、原発は限界にきているとの認識を示したばかり。
 東京電力福島第一原発事故のとき五十四基あった原発のうち原子力規制委員会の「新規制基準」に適合したとして再稼働しているのは九基。東日本はゼロである。この現状からも発言は当然のことを述べたように思えた。
 それが豹変[ひょうへん]し、原発推進論を打ち上げだした。日立が英国での原発建設計画が「凍結」し、事実上撤退することが関係していると思われる。安倍政権は「原子力ルネサンス」と称して、原発輸出を成長戦略の目玉に掲げた。
 だが、三菱重工業がトルコで計画していた原発建設は断念の方向だし、米国の原発メーカーを買収した東芝は、それが原因で経営が傾く事態になったことは記憶に新しい。今度の日立を含め、原発建設費用がかさみ採算がとれなくなったという共通事情がある。
 総崩れした輸出戦略が駄目なら、国内回帰ということなのか。しかし、日本でも原発の建て替えはもとより新設や増設は到底無理。そこで、いまある原発を次々再稼働させようというのが中西氏の主張なのだろう。
 原発輸出がすべてパーになった背景には、再生可能エネルギーを重視する世界的な潮流があることを忘れてはならない。政府は二〇三〇年度に必要な電力の「20%~30%」を原発とする目標を掲げている。
 だが、それは難しいし、問題なのは再生可能エネルギーを軽視する傾向が垣間見えることだ。政府は再生可能エネルギーで生まれる電力の価格を引き下げた。九州電力は何度も買い入れストップをしている。原発二基を再稼働させた結果だという。逆ではないか。
 普及がめざましいメガソーラー(大規模太陽光発電)など自然エネルギーを最大限生かすのが急務だ。数多くの悲劇を生んだ原発事故から間もなく八年。原発政策は見直されるべきときである。(国分俊英 元共同通信社編集局長、本宮市出身)

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