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【県の当初予算案】次につなぐ視点で(2月6日)

 内堀雅雄知事は五日の会見で、総額一兆四千六百三億二千八百万円に上る県の二〇一九年度一般会計当初予算案を「復興の加速と福島ならではの地方創生を推進する予算」と位置付け、挑戦を進化させる考えを強調した。
 地方創生を巡っては、県の総合戦略が最終年度となる。しかし、人口減少に歯止めはかかっていない。地方創生は東京電力福島第一原発事故に伴う現・旧避難区域を含め、県内全域の将来に関わる最重要課題だ。翌年度以降を見越し、問題点を整理しながら各事業を進めるよう求める。
 戦略は二〇一五(平成二十七)年度から五年間を推進期間とする。「雇用と起業の創出」「若者の定着」「定住・二地域居住の推進」などを重点項目に掲げる。このうち、雇用と起業に関わる予算で注目したいのは、下請け中心のものづくり会社の知的財産に光を当てる試みだ。
 知財を活用して開発型、提案型の企業に転換できる仕組みをつくる。知財は、小規模事業所でも大きく躍進できる可能性を秘める。県内では、日本弁理士会や特許庁が既にセミナーなどを通して活用を後押ししている。連携を密に取り組んでほしい。
 定住・二地域居住では「関係人口」に着目した新規事業を盛り込んだ。移住などによる定住人口、観光などによる交流人口の中間に当たる。関係人口は本県出身者、県内勤務経験者、県内でのボランティア経験者、全国のふるさと納税者ら対象は幅広い。就労体験や地域住民と交流する機会を設けて結び付きを強め、移住・定住につなげるとしている。成果を得るには市町村、関係団体の協力が不可欠になる。
 人口減少は全国の自治体が深刻な問題と位置付け、さまざまな事業を展開している。県内に多くの人を呼び込むには、他県にはない本県の持ち味をどう生み出し、発信するかが鍵になる。広い県土の多彩な風土、農林水産、医療、観光など多様な産業といった「福島ならでは」を一段と磨く必要がある。
 復興関連では、東日本大震災と原発事故からの復興・創生期間が二年後の二〇二〇年度末で終了する。震災から十年に当たる。予算案では帰還困難区域の復興再生拠点整備、営農再開、廃炉産業への地元参入などを柱にした。
 ただ、残り二年で産業や生活基盤はどこまで復旧するのか。十年目以降の具体的な姿も見えてこない。復興も次の段階に向け、国と共に具体的な工程や全体像を早期に構築するべきだ。(五十嵐稔)

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