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【鶴ケ城改修】安全も魅力のひとつ(2月7日)

 会津若松市は観光のシンボルである鶴ケ城天守閣を大規模改修する方針を固めた。建築基準法の耐震基準を満たすよう、一部の壁を強化する。基本設計、実施設計を経て二〇二一年度に工事に着手する予定だ。昨年の天守閣の入場者は約六十万人を数える。安全性を高めることは、観光客の安心感につながる。
 鶴ケ城は戊辰戦争の際、西軍(新政府軍)の猛攻撃にさらされた。明治初期に周辺の建造物を含め、すべてが解体された。一九六五(昭和四十)年に再建された。建築から五十五年目を迎える。鉄筋コンクリート造りの地下一階、地上五階建て、延べ面積は千四百七十八平方メートルに及ぶ。地上三十六メートルの最上部からは市内を一望できる。二〇一一(平成二十三)年に屋根瓦を黒瓦から赤瓦にふき替えた。戊辰戦争以前の美しい姿に戻った。
 ほかに大きな改修工事は実施していなかったが、三年前の熊本地震を受け、市は昨年七月に基礎調査を行った。日本建築防災協会の耐震基準に照らした場合、「震度6弱程度までの耐震性は確保されているが、一部において現行建築基準法における耐震基準(震度6強以上)を満たしていない」との診断結果が出た。市は来訪者の安全と安心感の充実、建物の長寿命化のため、改修を決断した。具体的には、五層に分かれる天守閣のうち、やや強度が不足している最上部と二層目の壁を厚くする。工事は半年かかるとみられる。
 東日本大震災で石垣が崩落した白河市の小峰城や、熊本地震で被災した熊本城は、築城当時の工法を用いて再建に取り組んできた。熊本城は「復旧見学ルート」を設けたり、周辺の二十四カ所に案内板を立てたりして、工事の過程を分かりやすく公開している。歴史的文化財の保護と伝統の継承、観光客増の対策に知恵を絞る。今回の耐震補強に昔の工法を用いるのは難しいとしても、工事の進行状況を知らせるなど工夫の余地があるだろう。熊本城の「見せる復旧作業」は、長期間にわたって入場者を受け入れられなくなる鶴ケ城天守閣の工事でも参考になるはずだ。
 会津若松市は一九九七年に策定した城跡総合整備計画に沿って、周辺施設の見直しを進めている。二の丸のテニスコート六面は二〇一九年度中に芝生広場に衣替えする。コートを囲むブロック塀を撤去し憩いの場を提供する。市民の理解を得ながら、計画的に事業を進めてほしい。来場者の安全確保は観光地の責務でもある。(安斎康史)

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