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【被災地と大学】連携で知恵を出し合う(2月8日)

 南相馬市と東京大は五日、都内の本郷キャンパスで連携協定を結んだ。ドローン分野の産業・人材育成支援と産官学連携を通して、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想実現の一翼を担う。
 大学院の工学系研究科航空宇宙工学専攻が協定先となる。航空宇宙工学の分野で、東大が市町村と連携するのは全国初のケースという。市は昨年十月、会津大とも同様の協定書を交わした。大学との連携は、専門分野にとどまらず地域へのさまざまな波及効果が期待される。今後の展開に注目する。
 東大は二〇一八(平成三十)年度、人材育成プロジェクトの一環として南相馬市内の小・中学生を対象にドローンの機体操作やプログラムなどの授業を行った。協定は活動をさらに発展させ、市の復興と相双地域の振興に寄与する狙いがある。航空宇宙工学専攻は日本の航空・宇宙産業の中心となる人材を輩出し、理系学生に最も人気のある学科に挙げられている。大学院で学ぶ学生や教職員が、被災地に触れ、理解し、復興に携わる意義は大きい。
 被災地の市町村が農業や工業などの具体的な分野で全国の大学と連携を始める事例が増えている。背景にはイノベーション・コースト構想促進への学術研究活動支援事業がある。被災地の市町村と連携協定を結んでいるか、今後結ぶ予定のある大学が被災地で実施する事業を補助する。二〇一八年度だけでも東大の他、京都、東京工業、早稲田、慶応など十四大学が事業に乗り出している。
 大学と市町村の連携は二〇〇七年の学校教育法の一部改正により広がった。新たに「大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」との項目が設けられた。
 教育や研究の成果を積極的に社会に公表、還元していくことが大学に求められるようになったことで、大学側と地域再生を模索する市町村の思いが重なった。特に、東日本大震災後は総務省や文部科学省などの施策もあり、連携が増えている。
 大学の存在しない地域でも連携によって、さまざまな知識や技術を呼び込むことができる。学生が日常的に被災地に出掛ける環境ができれば、将来を担う人材育成にもつながる。被災市町村が、大学の人的、物的資源をいかに有効に活用するかの知恵を絞ることも、復興と再生への大きな鍵となる。(関根英樹)

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