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理科室の好きな少年(2月8日)

 いわき市に生まれた少年は小学校の理科室にたびたび駆け込んだ。教師に勧められ、子どもでも作れるラジオを組み立てる。聞いたことのない海外の言葉に触れるのが楽しい。ものづくりのとりこになった。
 高校を卒業し、大手電機メーカー系の企業に勤めた。肩掛け式の大きな携帯電話を見掛ける。「重そうで不便だ。何とかならないか」。二十七歳で会社を辞めた。小型化を目指して、電池の研究を始めた。プレハブ小屋で悪戦苦闘した。会社の資本金五百万円を確保するのにも苦労する。信用金庫の支店長だけが事業を理解し、お金を貸してくれた。
 携帯電話やエコカーに使われる電池の試験装置を提供し、社業を伸ばした。業界で確かな地位を占める。古里に電池の関連企業を集め、市民の働く場を確保しようと駆け回る。理科室が好きだった少年は庄司秀樹さん。東洋システムの社長を務める。
 きょう八日、第四回ふくしま産業賞表彰式で最高の知事賞を受ける。信金の経営者となった支店長から祝福の生花が届いた。会社の玄関に飾り、いわきに尽くすのが恩返しと誓う。子どもたちに思いを伝える。「大切なのは学歴じゃない。夢を持つこと」

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