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厄年と洗剤(2月9日)

 厄年[やくどし]を迎えた人が年齢の数の食器用洗剤をそろえ、親類や知人に贈る風習がある。福島市をはじめとした県北地方などでは、今頃の時期によくみられる。「厄を洗い流して」と願いを込める。
 特設のコーナーを設ける店がある。「お歳暮」「お中元」と同じように「厄落とし」「厄払い」などと印刷した専用の熨斗[のし]紙を用意する。神社や寺院でおはらいをしてもらっても「洗剤を配らないと気が晴れない」という人もいる。時には、凧[たこ]や紙風船を一緒に配る。こちらは「厄を飛ばす」意味があるという。
 民俗学の本を調べても、同じような慣習はほとんど紹介されていない。「三省堂年中行事事典」(田中宣一、宮田登・編)は「広く各地にみられるのは、節分の晩に自分の年齢の数だけの豆を辻や村境などに落としてくるというものである」と記す。洗剤の文字はどこにも見当たらないから、珍しい習わしなのだろう。
 今の時代、人工知能で暮らしや仕事の形を変え、先端医療で重い病気を克服しようという動きがある。だが、科学の力で心の中身まで変えることは難しい。厄年をきっかけに、後悔が残る人生を洗い上げ、ピカピカに生まれ変われたなら素晴らしい。

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