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あきらめない(2月11日)

 二十年前、バリアフリーという言葉はまだ一般的でなかった。伊達市梁川町の民家で、車椅子の男性は取材に対してはっきりと答えた。「重度の障害者でも、その気になれば海外旅行はできる」。話に思わず引き込まれた。
 男性は佐藤孝浩さん。一九八九(平成元)年、労災事故に遭い、肩から下が自由に動かない。閉じこもりがちな生活が続く。親戚とグアムに出掛けたのをきっかけに、旅が社会参加の一つになった。当時、団体旅行の参加には介助者の同行が求められた。料金も割高で、決して簡単ではなかった。
 一九九九年六月に任意団体の「障がい者の旅行を考える会」を発足させた。気軽に出掛けられる仕組みを目指した。家族に頼らず、一人でも楽しめるように介助ボランティアが同行する。問い合わせの電話が次々に鳴った。ツアーの回数は海外三十五回を含めて計七十二回となる。参加者は延べ約千三百人を数える。
 「行ってよかった」。旅行なんて無理と思い込んでいた参加者の言葉が何よりの活力になるという。四月に二十周年でイタリアへ向かう。「一番大事なのは絶対に行くという気持ち」。諦めない心の大切さをこれからも伝える。

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