信頼の崩壊 原発検査記録改ざん

(中) 安全管理、事業者頼み 9/2
 
(下) 原子力政策、泥沼に

2002年9月3日(火)掲載


  双葉郡の首長らが東電を呼んで開いた緊急会議。トラブル隠しへの強い憤りが噴出した

 「プルサーマルの事前了解は白紙だ」「地元でも、あからさまにもう原発は要らないという人が出てきた」。原子力発電所の立地地域である双葉郡八町村の町村長、議会議長の緊急会議が開かれた二日、出席者からは怒りともあきらめともとれる声が聞かれた。


 福島第一、第二両原発合わせて十基のプラントを抱える双葉郡は原発との共生を目指し、国や東電の「良き理解者」だった。先月二十九日も県のエネルギー政策の見直しで暗礁に乗り上げたプルサーマルや原発増設問題の局面打開に向け、楢葉町の草野孝町長は町役場を訪れた川手晃副知事と話し合いをしていた。
 国が東電のトラブル隠しを公表したのはその数時間後。「県と歩み寄る活路を見いだそうとしていた矢先なのに、すべてパーだ」と草野町長。国と東電が信頼とともに「理解者」を失ったことは原子力政策が泥沼にはまったことを意味する。


 プルサーマルと増設は核燃料サイクルと地球温暖化防止を実現するため国と東電が掲げる重要な計画。中でもプルサーマルは現在、使用済み核燃料を再処理して使用する核燃料サイクルを動かす唯一の手段で、福島第一原発3号機をはじめ全国三カ所で導入が計画されている。
 本県は平成十年、県議会の意見を踏まえて事前了解を出した。しかし、導入計画があった関西電力高浜原発用のMOX燃料データ改ざん問題が十一年に発覚以来、JCOの臨界事故や本県のエネルギー政策の見直しなどが相次ぎ、いまだに実施できない状況が続いている。
 新潟県の柏崎刈羽原発は本県の原発よりプルサーマルの実現可能性が高いとみられていたが、今回の問題を受け「振り出しに戻った」(原子力安全資源課)としている。また、核燃料サイクルの一翼を担う使用済み核燃料再処理施設が建設されている青森県は「プルサーマルには直接影響はしない事案だと思う」(資源エネルギー課)としながらも、楽観的な状況にはないとの認識だ。


 東電の南直哉社長は検査記録改ざんの記者会見の中でプルサーマルの実施見送りを表明したものの、その必要性については従来通りの考えを示した。原子力委員会の藤家洋一委員長も「こうしたことが起こっても、核燃料サイクルの確立の重要性を国民に訴えていく」とこれまでの路線の維持を強調する。
 ただ、事業者の背信が明らかになり、立地地域の理解を失った中で、誰が、どこでプルサーマルや原発増設をするのか。「東京電力は“自爆”した。プルサーマルや増設はもうだめだ」。県議の一人は東電が主役となった今回の事態の重さを指摘する。国や東電がトラブル隠しの全容解明とともに原子力政策そのものの問い直しを迫られるのは必至とみられる。
 「これで日本の原子力政策は確実に十年は遅れる」。長年、原子力にかかわってきた関係者は今回の問題の影響をそう表現した。

(中) 安全管理、事業者頼み 9/2


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