東電、国、県の思惑交錯 「地元理解」が最大の焦点

2003年3月7日(木)掲載

 東京電力の原発トラブル隠しなど一連の不正問題は、昨年八月末の発覚から半年が過ぎた。次々と明るみに出た問題は、原発だけでなく原子力政策そのものに対する信頼を根底から揺るがした。停止したプラントは運転再開を視野に点検や健全性評価の作業が進んでいるが、電力需要が増える時期を控えて、供給には不透明な要素も数多い。不正発覚後、東電や国の安全、安心への取り組みは変わったのか。トラブル隠しの「その後」を検証する。

再稼動の行方

   二月初め。原子力発電所の運転の許認可権を持つ経済産業省原子力安全・保安院のホームページに福島第一原発3号機に関する“お知らせ”が載った。「東京電力は3号機の漏えい率検査計画を一月三十一日に提出しました。計画では漏えい率の測定を三月十日に行うべく事前の準備を行うとしています」
 漏えい率検査は定期検査の最終段階であり、その終了は、技術的には運転再開が可能になることを意味する。保安院は「検査の過程をお知らせしただけ」(原子力発電検査課)と説明したが、運転再開をイメージさせる表現に東電は「地元の感情を逆なですることにならないか」と懸念した。東電の担当者は、県や地元の町に「地元理解なしには運転再開はできない」と念押しした。


 3号機の定期検査では制御棒を動かす配管に関する国の使用前検査で不具合が見つかったが、すでに最終段階に入っている。自主点検の総点検の最終報告も二月末に公表された。炉心隔壁(シュラウド)の健全性評価も本県の原発を対象とした議論が間もなく始まる。こうした状況に呼応するように原発立地町の首長の動きも活発化している。
 原発立地四町が参加している双葉地方町村会、県原子力発電所所在町協議会は二月中旬から末にかけて県、経済産業省資源エネルギー庁、東電を相次いで訪れた。県には国や東電への健全性評価などの説明会の要請を、国と東電には説明会の開催を求めた。
 協議会長の草野孝楢葉町長は「いつまでに運転ができる状況になるのか国にきちんと言ってもらいたい。実際の運転再開までには時間がかかるだろうが、地元の失業者を見ていると忍びない」と実情を語る。県幹部は「ストレートに運転再開は言えないが、それに向けた地ならしだろう」と注視する。


 立地町の動きに対して、佐藤知事は二月二十六日の二月定例県議会代表質問で「運転再開に言及する時期ではない」とこれまでの姿勢と変わりないことをあらためて表明した。
 現在の県議は、開会中の二月定例会が改選前の最後の議会。議員の一人は「知事の答弁で、原発に対する県議会の判断は、改選後の議会で考えることになったのでは…」と、統一地方選後の五月以降にずれ込む可能性が高いと指摘する。県議会内では改選前に原発の運転再開という重要な判断は先送りしたいという雰囲気が大勢を占めている。
 別の議員は「原発が立地する地元の首長や議会がぜひやりたいと声を上げてくれると、県議会も県も動きやすくなる」と本音を漏らす。東電だけでなく、県や県議会、地元も、運転再開のキーワードとなっている「安全と安心」の基準を、どこに置くのかを見極めきれずにいる。=おわり=

 

 
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