(下)”真の安全”へ正念場

2003年7月13日(日)掲載


中央操作室で制御棒の引き抜き
をコントロールするスタッフ

 東京電力の原発十基が立地する双葉地方。平時約九千人が働く発電所は定期検査が重なると一万人を超える雇用を生む。「やっと一基が立ち上がった」。佐藤知事の福島第一原発6号機の運転再開受け入れ表明後、サイト内には、6号機が残る九基のプラントの再稼働への弾みになる―と期待感が広がった。
 双葉町の岩本忠夫町長は福島第二1号機が十八日にも国の「安全宣言」を受ける予定であることを明かし「(安全宣言には)1号機以外のプラントも含まれる可能性がある」との見通しを示した。


 現時点で再稼働の準備が整っているのは福島第二1号機と福島第一3、5号機の三基。プラントの状況はそれぞれ違っている。福島第一5号機にはひび割れなどの損傷はなかったが、福島第一3号機は制御棒駆動系の配管にひび割れ、福島第二1号機は弁の固定用チェーンの取り付け不良が見つかり補修のため定期検査が長引いた。
 5号機は福島第一6号機と同じ状況のため比較的、再稼働への理解は得やすいかもしれない。問題は1、3号機を含め、その後に再稼働準備を整えるとみられる福島第一4号機、福島第二3号機などトラブル隠しを招いた炉心隔壁(シュラウド)や再循環系配管にひび割れが見つかった“傷もの”の扱いだ。
 東電は今回、再循環系配管についてはすべて交換するが、シュラウドについてはひびを削り取ることで対応している。これまで原発プラントについては新品同様の状態が求められていたが、国はトラブル隠し発覚後に打ち出した維持基準の導入を前倒しして方針を転換。安全に支障がないと判断された損傷についてはそのままでも運転を認める方針だ。
 安全性を最終確認するのは一連の東電によるトラブル隠しを見抜けなかった経済産業省原子力安全・保安院。維持基準が導入され、これまでのように推進側からしか安全管理ができないとすれば、再び技術者や現場の暴走を許すことになる。立地自治体が保安院の経産省からの分離や維持基準の慎重な導入を求める理由はここにある。


 福島第一6号機が動きだしたばかりだが、東電は「夏場の電力不足を回避するには少なくともあと三基は動かしたい」、国も「6号機が稼働しても電力需給は厳しい面がある」とし、電力危機をテコにプラントの再稼働を進める姿勢を変えていない。
 県や県議会は今後、個別プラントごとに運転再開の是非を判断していく見通しだが、果たしてこのままで県民の安全と安心は確保されるのか。原発トラブル隠しからほぼ一年。「これから県や県議会が出す答えは国と事業者の体制・体質を変える上で重い意味を持つ」。県内の原子力関係者は、これからが正念場とみている。

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