阿武隈山系の真ん中に位置する飯舘村。黄金色の田んぼでは稲刈りが最盛期を迎えていた。今年は冷夏だった昨年とは打って変わって豊作だ。のどかな風景は平和そのものだが、村民の表情はどこかさえない。顔を合わせれば合併か村長選の生臭い話をせざるを得ないからだ。
「合併をめぐっては家族の中でも意見が分かれてしまっている」。農業を営む浜野邦男さん(62)は困っていた。母と妻、息子夫婦、孫二人の七人家族。人口が少ない村の将来を思えば、合併はやむを得ないと考えているが、中学生の孫は「生まれ育った村の名前が消えるのは寂しい」と合併には反対だという。
浜野さん方に象徴されるように一つの家族のようだった村全体が今、国が進める合併の二文字で揺れている。

南相馬合併協議会 各市町村議会の議決を受けて今年2月13日に飯舘、小高、鹿島、原町4市町村で設置。予定通り合併すれば人口は約8万2千人、面積は628平方キロの対等合併による新市となる。名称は「ひばり野市」に決定した。来年9月26日に誕生を目指している。