二十一世紀に入り、電力を取り巻く環境が大きく変化しようとしている。原子力発電では、プルサーマル計画という核燃料の再利用システムが当初目標より大幅にずれ込み、スタートのめどすら立っていない。国策とされる再利用システムが立ち往生している背景には、現在の態勢に対する不信感とともにエネルギー政策に、より積極的にかかわろうとする立地県の意識の高まりがある。国民生活の基盤となるエネルギー政策の揺れを立地県から問い直す。

 

40

原発の労働者定検短縮で収入減

地元旅館、ホテルにも影響

(6月7日(金)掲載)

 富岡町のビジネスホテルひさご。駐車場には茨城県内のナンバーの乗用車が並ぶ。定期検査が五月七日から始まった東京電力福島第二原子力発電所2号機の建設には日立製作所が主にかかわった。このため、定期検査にも原子力関係の事業所がある茨城県日立市をはじめ、多くの関連企業の社員が双葉郡内に泊まり込みで作業に当たる。
 「旅館やホテルの稼働率はようやく85%に上がった。定期検査がなかった四月までは毎月20%台だった」。富岡地区旅館業組合会長でもある平山元吉・ひさご社長は、定期検査への旅館業界の期待を語る。
 昭和五十五年にオープンしたホテルは五十四人を収容できる。「十基の原子炉が完成すれば、定期検査は切れ目なくある」。東電側は原発建設当時、平山社長らに説明した。しかし、次第に定期検査の期間が短縮され、宿泊する作業員がゼロとなる時期が出始めた。
      ◇
 定期検査の期間は、かつての百日前後の「三カ月点検」から、半分以下の「四十五日点検」が主流になりつつある。県内の原発の平均日数は、平成七年が八十二日間だったが、十二、十三年には七十日間にまで減った。最も短い場合は四十日で終了した。
 東電は、原発の運転停止期間を短くして収益を高める「企業の論理」はもちろん、作業員の被ばく量を抑える意味でも期間短縮に努めている。
 原発の安全面を指導する原子力安全・保安院の原子力安全検査課は「法律に定められている順守事項が適切ならば、検査期間の制約はない」と説明するだけだ。
   ◇   ◇
 検査短縮の影響は、原発労働者の生活にも影響を及ぼしている。原発の機械関係に携わる双葉郡内の五十代の男性は四月末から、茨城県ひたちなか市の火力発電所の建設現場に出張している。
 妻と二人の子どもを自宅に残し、戻るのは週末だけ。少なくとも七月まではこの状況が続く。それ以降も県内の原発で仕事がなければ、福井や新潟、宮城などの原発に出張する。「仕事はつらくないが、収入や家族のことを考えると、他県で働くのを避けたい」と話す。
 以前は月四十―五十万円あった手取りが定期検査の短縮や残業の減少で三十万円弱になった。郡内の他業種に比べて高かった収入も「人並み」になっている。
 「この仕事をあと何年、続けられるのだろうか」。男性は今、自問自答している。=第3部・おわり=

©福島民報社2002


Copyright(C) 福島民報社 All Rights Reserved.