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「段ボールの芸術品」 遠藤昭三さん、避難先のビッグパレットで制作

「段ボールの芸術品」の前に立つ遠藤さん

 「みんなが笑顔になれば、それだけでいい。あのころは、それだけを思って作っていた」。福島県富岡町の遠藤昭三さん(55)は、避難していた郡山市のビッグパレットふくしまで、段ボールを使った作品を見つめ、出会った人々の笑顔を思い浮かべた。今は戻れない自宅の庭に咲いた花。サクラ、アジサイ、ヒマワリ、ボタン...、避難所で食べたいとみんなで思った食べ物...。思い出が詰まった約30点の「段ボールの芸術品」は31日まで郡山市安積三丁目の福島銀行安積支店のロビー展で展示されている。
 遠藤さんは、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故のため4月、ビッグパレットふくしまに妻恵子さん(56)とともに避難、1階の救護所の入り口近くに落ち着き先を決め、段ボールで仕切りをした。
 みんなの心に余裕はなかった。段ボールにぶつかり暴言を吐いたり、蹴る人もいた。「みんなストレスのはけ口が欲しかったと思う」。少しでも心を和らげようと、段ボールに絵を描くことにした。支援物資用の空き箱を集めてカッターナイフで絵を切り抜き、色とりどりに塗り上げて重ね、立体的な装飾作品も作った。みんなが寝静まった真夜中に、黙々と作業した。
 「次は何を作るの?」。周囲の人が声を掛けてくれ、人々の笑顔が増えた。季節に合わせ、リクエストに応じ、時には古里・富岡を思い出しながら作り続けた。6月下旬、同市富田町の仮設住宅に入居が決まった。避難所からの退居を知った人々から「寂しくなっちゃうよ」「作品はそのままにして」などと言われたが、自分の思い出の品として持ち出した。避難所は8月末に閉所したが、知り合った仲間と、今も連絡を取っている。
 退居後、作品が評判を呼び、東京や関西で展示された。遠藤さんは郡山市の老人ホームで、お年寄りと一緒に創作する機会にも恵まれた。避難所で過ごした約3カ月に生み出した作品と知り合った人々との輪が、今では掛け替えのない宝物になった。
 「自分の人生を楽しみたい。今を生きるために。落ち着いたらボランティアでいろんな所を回るよ」と遠藤さんは話している。作品展の閲覧時間は午前9時から午後5時まで。土日、祝日は休み。無料。

カテゴリー:なるほど

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