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葛尾で畜産再開 古里再生、牛と共に

運搬車から和牛を牛舎に移動させる下枝さん(右)=22日午後2時ごろ

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示が帰還困難区域を除き昨年6月に解除された葛尾村で3月22日、原発事故後初めて畜産が再開された。同村夏湯地区の下枝初恵さん(50)が田村市船引町芦沢に避難させていた繁殖和牛を自宅脇の牛舎に移した。「村の畜産業を復活させて復興に貢献したい」。村の再生に向けて希望の一歩を踏み出した。
 阿武隈山系の山あいの集落に6年ぶりに牛の鳴き声が響いた-。田村市船引町芦沢から葛尾村夏湯地区まで約30キロ。運搬車に親牛と子牛を乗せて午前と午後の計2往復、片道約1時間かけて12頭を葛尾村に移動した。下枝さんらが牛を運搬車から牛舎に移すと、少し落ち着かない様子で周りを見回した。
 東日本大震災前、葛尾村は農業が主産業で、稲作と畜産をともに営む世帯も多かった。震災発生時の村内の畜産農家は96世帯。繁殖和牛392頭、乳牛140頭、肥育牛3610頭を飼育していた。原発事故による避難のため乳牛と肥育牛は売られ、繁殖和牛392頭のうち旧警戒区域外で避難申し込みのあった約160頭が田村市船引町芦沢と同市常葉町の牛舎に移された。
 現在は2つの牛舎で24世帯の約120頭の繁殖和牛と子牛を飼育している。下枝さん方を含め今月中に7世帯の約50頭が村内に戻る。村は平成29年度末までに避難している全ての牛を戻す方針だ。
 震災直後から6年間、田村市船引町で避難した牛を管理してきた坪井泰男さん(58)は「葛尾は畜産業には最適の場所だ。鳴き声が聞こえると村に生活感が出てくる」と牛の帰還を喜んだ。

■家族力合わせ 下枝初恵さん

 下枝さんは「ほっとした気持ちが半分、しっかり管理できるかという不安が半分」と複雑な心境を打ち明けた。それでも、首筋を優しくなでながら、手塩にかけて育てる愛らしい牛に目を細めた。
 震災前、稲作をしながら繁殖和牛10頭を飼育していた。原発事故による避難後は牛を預けている田村市船引町の牛舎に週1、2回、様子を見に通った。子牛が競りに出される前には念入りに手入れをした。
 夫と息子とともに、避難先の三春町の仮設住宅から18日に村内の自宅に戻って生活を始めた。家族の手助けを受けながら、当面は自らが所有する繁殖和牛6頭と、村内の別の畜産農家の和牛6頭を管理する。
 「避難している村民が古里に戻って牛を飼育したいと思うように畜産に励みたい」。慣れ親しんだ土地で再出発を果たし、決意を新たにした。

カテゴリー:響く

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