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被災地ルポ 家族はどこへ 望み捨てず捜索 原町 上野敬幸さん(38) 「人手足りぬ」

被災した住宅跡に供えられた花束。右奥は上野さんの自宅=29日午前11時40分ごろ

 東日本大震災による津波で行方不明となった住民の捜索は終わりが見えない。東京電力福島第一原子力発電所の事故がさらに困難にしている。南相馬市では、被災者でもある多くの消防団員が懸命の活動を続ける。いわき市岩間町では老夫婦の平穏な日々が引き裂かれた。波間に消えた最愛の家族の面影を追って、涙をこらえながら捜し求める日々が続く。
 聞こえてくるのは波の音だけだった。子どもたちの笑い声、両親の農作業の音...。当たり前だった日常は震災を境にぷっつりと途切れた。南相馬市原町区萱浜地区の市消防団原町区団第三分団第二部班長で団体職員の上野敬幸さん(38)は連日、がれきをかき分け続けている。
 上野さんは両親と妻、二人の子どもとの六人暮らしだった。仕事で外出していた上野さんと妻貴保さん(34)は難を逃れたが、母順子さん(60)と長女永吏可さん(8つ)が遺体で見つかり、父喜久蔵さん(63)と長男倖太郎ちゃん(3つ)の行方は分からないままだ。原町区内にある貴保さんの実家に身を寄せながら、仲間の団員と共に捜索にいちるの望みを託す。
 わずか20日前まで家族の幸せな日常を照らしていた太陽は今、がれきの山を照らし出す。両親が長い年月をかけて作り上げた農地は海水をかぶってもう使えない。自宅は住める状況ではない。「とにかく人手が足りないんだ」。一刻を争う気持ちで毎日朝から日が落ちるまで捜索を続ける。
 上野さんの毎日の楽しみは家に帰り仮面ライダーが大好きという倖太郎ちゃんと遊ぶことだった。「子どもたちはかわいい盛り。この怒りはどこにぶつければいいのか...」。津波に襲われた自宅は一階部分は壊れたが、二階までは海水が達せず、倖太郎ちゃんが4月から通う予定だった幼稚園で使う道具はそのまま残っている。
 地元の消防団員には家族の行方が分からない人も多い。捜索中にくぎを踏み抜き、けがをしてもどんなにつらくても捜索の手を緩めない。それでも人の力に限りはある。重機も十分ではない。「原発の事故で捜索できない双葉郡などに比べればまだいい」。上野さんのつぶやきは波音に消えた。
 「宮城県石巻市では被災から9日ぶりに救出された人もいる」。しかし、時間がたつにつれ団員の焦り、疲労が募る。今日も終わりのない捜索は続く。(柳沼 光)

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