東日本大震災

  • Check

避難先で青空理容室 楢葉の松本豊子さん「できることを」

避難者の散髪をする松本さん(左)

 「どんな髪形にしましょうか」。会津美里町に避難している楢葉町の理容師松本豊子さん(52)は、避難所となっている旧赤沢幼稚園の園庭に設けられた"青空理容室"で被災者の散髪を続けている。

 楢葉町下小塙で「バーバー菫(すみれ)」を営んでいた松本さん。震災発生時は、仕事が一段落し、店の近くにある自宅の居間で休憩していた。激しい揺れに襲われた。夜勤明けで家に戻っていた介護士の長男聡彦さん(24)と共に「早く収まって」と祈り続けた。

 会社員の長女希さん(23)は富岡町の仕事先からすぐに帰宅。家族3人で、いわき市の避難所に移動した。数日で帰れるだろうと、着の身着のまま避難。はさみなど仕事道具は置いてきたままだった。

 その後、いわき市の避難所に地元の理容師の女性が散髪ボランティアのため訪れた。松本さんは自然に「私も理容師です。お手伝いさせてもらえませんか」と願い出た。

 震災以来、三週間ぶりに握ったはさみ。16歳の頃、埼玉の店で修業した当時を思い出した。不安を抱えながらも、再び理容師として生きていく覚悟を決めた。「今、はさみを捨てるわけにはいかない。理髪店のおばちゃんに戻らなければ」

 埼玉にいる昔の仕事仲間からはさみのほか、くしやバリカンなど道具一式を送ってもらった。「自分にできることをしたい」と、避難所で散髪ボランティアを申し出た。苦難を共有している被災者同士、髪を切りながら地元への思いを語り合っている。

 聡彦さんと希さんは現在、東京の親戚宅で新たな生活を始めている。家族はバラバラだが、みんな前に向かっている。「またいつか店を再開させたい」。理容師として生き抜く思いが松本さんを支えている。一時帰宅ができれば、愛用のはさみを持ち帰るつもりだ。

東日本大震災の最新記事

>> 一覧