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原発賠償 農家が困惑 JA通さない取引分は?

【写真】道の駅ひらたが生産者に配布した農産物損害等記録表。販売予定単価、損害見込み額などの記入欄がある

 東京電力福島第一原発事故で損害を受けた農家への賠償金仮払いで、JAを通さずに出荷している生産者は賠償請求額の算定などに苦慮している。JAは組合員の被害を取りまとめているが、販売先と直接取引している農家は自分で東電に請求する仕組み。納入先の直売所などは請求額を確定させるよう取引農家に対し指導しているが、算定方法などが浸透していないという。請求できていない農家からは「泣き寝入りするしかないのか」と嘆きも漏れている。
 「どうしていいか見当もつかない」。石川町でホウレンソウや小松菜などを生産し、JAを通さずに出荷している男性(72)は、ため息をついた。
 特にホウレンソウはハウスと露地で年3、4回収穫する主力農産物で、栽培面積は延べ約2ヘクタールに上る。近くのJAに賠償請求手続きについて相談すると、過去3年分の伝票などの資料や農作物の写真を日付入りで求められた。しかし、日付入りの写真は撮影しておらず、今も請求額を確定させられずにいる。
 警戒区域に指定された南相馬市原町区鶴谷の農業吉田十四子さん(76)は娘のいる茨城県つくば市への避難を余儀なくされた。原町区の直売所「まちなかひろば」とJAそうまが運営する直売所「旬のひろば」にホウレンソウやダイコンなどを出荷していた。
 今年はまちなかひろばへの出品を増やす予定だったが、避難で生産すらできなくなった。「避難と野菜を出荷できない二重苦。JAの直売所以外に出荷した分の補償はどうなる」と頭を抱える。
 平田村の道の駅ひらたでは、出荷している農家137軒の4割近くがJAを通していない。道の駅は生産者に「出荷停止・自粛」「出荷したが返品・廃棄などで販売できなかった」など損害の理由や、損害見込み金額などの記入欄がある損害記録表を配布し、賠償請求額を算定するよう呼び掛けている。
 同村の宗像六郎さん(57)はシュンギクやキャベツ、ホウレンソウを同道の駅に出荷する予定だった。「請求できたとしても、どこまで補償してもらえるのか」と先が見えない不安にかられている。
 さらに直接、農作物を納めていた生産者には、個人で東電との賠償交渉に臨むことに不安を持つケースもあるという。高野哲也駅長(50)は「小さな団体が窓口になることで、交渉が難航するようでは困る」と指摘する。
 JAグループは過去3年間の月ごとの取扱高平均値を基に農作物の単価を計算する方法を示している。JAに未加入の生産者も、委任状を受けて請求手続きを引き受けることを検討しているが、各JAで足並みはそろっていない。

カテゴリー:福島第一原発事故

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